産業衛生学雑誌
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福祉施設看護婦における終業時の疲労に関連する業務負担と体力
島岡 みどり蛭田 秀一小野 雄一郎矢部 京之助
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1995 年 37 巻 4 号 p. 227-233,A86

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抄録

看護婦の業務に伴う疲労と関連する具体的な体力要素を探ることを目的に,社会福祉施設に勤務する20~49歳の看護婦について,終業時の疲労の程度と各種業務内容の負担度および各種体力の水準の間の関係を調べ,以下の結果を得た. (1)年齢にかかわらず,疲労訴え率は35~38%とほぼ同じであった. (2)筋力,柔軟性,全身持久力に関する体力7項目のうち,疲労の程度の違いによる有意差がみられたのは腕パワーと最大酸素摂取量の2項目であった.両項目とも,重疲労群の平均値が軽疲労群を下回った. (3)負担訴え率が50%以上の業務は21業務中4業務あり,それは「重症者看護」,「機械類装着者看護」,「入浴介助」,「排泄介助・むつき交換」であった. (4)疲労の程度の違いによって,負担訴え率に有意差がみられた業務内容は,「機械類装着者看護」,「入浴介助」,「排泄介助・むつき交換」の3業務であった.いずれの業務についても,重疲労群の負担訴え率は軽疲労群を上回った. (5)腕パワーの水準は「重症者看護」,「機械類装着者看護」,「排泄介助・むつき交換」の各業務の負担と関連していた.いずれの業務についても,低腕パワー群の負担訴え率は高腕パワー群を上回った. (6)最大酸素摂取量の水準は,「機械類装着者看護」,「入浴介助」,「排泄介助・むつき交換」の各業務の負担と関連していた.いずれの業務についても,低最大酸素摂取量群の負担訴え率は高最大酸素摂取量群を上回った.以上の結果から,看護婦の終業時の疲労の程度は,上肢の筋力や全身持久力の水準と関連する業務内容の負担の程度と関係しており,過度の疲労に至らずに業務を遂行するためには,これらの業務負担の軽減や体力の維持・向上のための措置が必要であることが示唆された.

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