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情報界のトピックス
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2015 年 57 巻 11 号 p. 865-868

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ニューヨーク市の公共図書館がWi-Fiのホットスポット貸し出しへ

ニューヨーク市は,市全域にわたるネットワークの提供を2015年に開始することを計画しているが,ネットワークのインストールには時間がかかることから,より多くの住民がブロードバンドにアクセスできるよう,当分はニューヨークの公共図書館が,暫定的な解決策を住民に提供することになった。2014年夏にブロンクス区とスタテン島区にある4つの分館で,モバイルホットスポット貸し出しのパイロットプロジェクトが成功裏に終わったことを受けて,間もなくニューヨーク公共図書館(New York Public Library: NYPL),ブルックリン公共図書館,クイーンズ公共図書館の3館で,モバイルホットスポットの貸し出しを始める。ホットスポット1台で,ラップトップPC,タブレットPC,携帯電話などのモバイル機器やゲーム機が最大10台,4GLTEブロードバンドに接続できる。Sprint社が提供するホットスポットの経費は,通常2年間のサービス契約料49ドル+毎月110ドル(データ容量30ギガバイト)であるが,図書館はこれを住民に無料で貸し出す。「Check Out The Internet」と名付けられたプログラムに登録すればその間,データ量の制限なく利用できる。ニューヨーク公共図書館の調査によれば,現在図書館でコンピューターやインターネットを利用している人たちの55%が,自宅ではブロードバンドインターネット接続ができない状況にあることから,1万家族にホットスポットを貸し出すことを目標にしている。

今回のプログラム実施には,1万台の機器を予定している。必要経費250万ドルは,図書館が一部を負担するほか,Google社からの資金援助100万ドル,ナイト財団(Knight Foundation)が選んだKnight News Challengeの賞金50万ドルが充てられる。オープンソサエティ財団(Open Society Foundations)とロビンフッド財団(Robin Hood Foundation)からの援助も受ける。ホットスポットが返却されなかった場合,100ドルの罰金を科したり,最悪の場合,遠隔操作でサービスを無効にすることも可能であるが,そのようなことは起きないだろうと図書館では考えている。

上記に加え,ニューヨーク市は,市全5区にわたるLinkNYCネットワークを構築するために,携帯電話の普及によって不要になった数千の公衆電話を,24時間無料で使用できるWi-Fiホットスポットに作り替えるプロジェクトを,2014年11月に発表している。公衆電話ブースはキオスクに置き換えられ,各キオスクの半径150フィート(45.72メートル)内で秒速1ギガバイトのWi-Fiサービスが,2015年後半に開始される予定である。キオスクでは無料国内電話,携帯機器用の充電スタンド,市のサービス・地図・観光客のために道案内を示すタッチスクリーンディスプレーも提供される。すべて無料で,経費はストリーミング・デジタル広告によって賄われる。市は,12年間で5億ドルの収入が得られ,税金による負担はゼロになることを期待しているが,実際にはどれだけの費用がかかるか不明である。

  • (http://the-digital-reader.com/2014/12/07/nyc-libraries-lend-hotspots/) (http://www.nypl.org/press/press-release/december-2-2014/mayor-bill-de-blasio-city-library-chiefs-announce-expansion) (http://www1.nyc.gov/office-of-the-mayor/news/923-14/de-blasio-administration-winner-competition-replace-payphones-five-borough) (accessed 2015-01-07).

電子書籍価格操作をめぐる訴訟は差し戻しか

電子書籍の価格操作をめぐる訴訟で,米国司法省はApple社が出版社間の違法な共同謀議を仲介したと主張しているが,控訴裁判所は2014年12月15日に行われた審理において,その主張に「なぜ司法省はAmazon社には焦点を合わせなかったのか」との疑問を投げかけた。そして,連邦地方裁判所のDenise Cote判事が,Apple社が5大出版社と価格協定を結んだのは独占法違反であるとした2013年7月10日の裁定(vol. 56, no. 6の本欄にて既報)は,早急すぎた可能性があることを示唆した。Fortune誌によれば,控訴裁判所3名の判事のうち2名がApple社の主張に傾いているようである。控訴裁判所のDennis Jacobs判事は,「これらの人々が,独占企業を打ち負かすために集まるのは,猫に鈴をつけるためにネズミが集まるようなものだ」と司法省側のMalcolm Stewart弁護士に語った。ここで猫とされたのはAmazon社で,出版社らが電子書籍の小売価格を設定する「エージェンシーモデル」を導入した2010年には,Apple社と出版社らが,電子書籍市場の90%をコントロールしていた。Stewart弁護士はこれまで,Apple社が,出版社が電子書籍の価格を決定するために不法な共謀に携わっていたことを知っており,その共謀を助長したのであれば同罪であるとして,Apple社を麻薬密売人の運転手に例えてきた。Apple社側のBoutros弁護士は,控訴裁判所はCote判事の裁定を覆すか,合理の原則(行為の当不当の判断は,市場に与える反競争的効果の有無により,個々に行う)を考査するために,少なくともCote判事とは異なる判事に差し戻すことを求めた。

控訴裁判所の判断が出るまでに6か月ほどかかると思われるが,Apple社が勝つにせよ負けるにせよ,すでに出版社との間に結ばれた和解は,すべての人々にとって,より良い電子書籍市場を導き出しており,これを変えることはできないだろうと指摘する声もある。控訴裁判所がCote判事の裁定を支持すれば,Apple社は消費者に4億ドル,33の州政府と集団訴訟の弁護士に5,000万ドルを支払わなければならない。しかし,地方裁判所に差し戻された場合は,Apple社の支払い総額は消費者への5,000万ドルと弁護士費用2,000万ドルに減額され,裁定が破棄されれば,支払いはゼロとなる。いずれにせよ,訴訟は最高裁までいくものとみられているようだ。

  • (https://gigaom.com/2014/12/15/judges-question-apple-ebook-verdict-and-amazons-role/) (accessed 2015-01-07).

英国では付加価値税率上昇後も電子書籍の価格は不変

2008年に制定されていた,デジタルサービスに対する付加価値税(VAT)を,販売者の国ではなく消費者の住む国に従って課税するEU法が,2015年1月1日に発効された。その結果,欧州本社をルクセンブルクに置く,Amazon社,Apple社,Nook and Kobo社は,英国で電子書籍を販売した場合,ルクセンブルクの税率3%ではなく,20%の付加価値税を払わなければならなくなった。増えた付加価値を誰が負担するのかが問題となるが,多くの出版社は,もしAmazon社が出版社に負担を押し付けるようなことがあれば,物議を醸すことになると主張してきた。英国のBookseller誌は,さまざまなジャンルの電子書籍168タイトルを調査したところ2014年12月25日から2015年1月2日にかけて,価格の変化はほとんどなかったと発表した。Amazonサイトで入手できる電子書籍29タイトルのうち,価格が上昇したのは4タイトルのみで,上げ幅は5~6%だった。Koboサイトでは,40タイトル中4タイトルの価格が上昇し,うち2タイトルの上昇幅は30%を超えていた。値上げの原因が付加価値税のせいかどうかは不明である。小売業者と出版社が協力して,税金分の価格上昇を和らげる方策をとったとみられる。

なお,マルタとイタリアの2国は個別に,電子書籍に対する付加価値税率の引き下げを決めた。印刷書籍に対する付加価値税率に合わせて,マルタは18%から5%に,イタリアは22%から4%に下げる。英国では印刷書籍の税率は以前からゼロである。フランスとルクセンブルクはEU基準に従わず,電子書籍への違法に低い付加価値税率を,2012年から実施している。フランスは5%,ルクセンブルクは3%である。

  • (http://www.thebookseller.com/news/e-book-prices-stable-following-vat-hike) (accessed 2015-01-07).

Googleとフランス宇宙機関,気球によるネット接続環境構築プロジェクトで提携

米Googleとフランス国立宇宙研究センター(CNES)は2014年12月11日,Googleが推進するProject Loonをフランス国内で共同推進することで提携したと発表した。同プロジェクトは,地方の遠隔地などネットワーク環境が整備されていない地域に,気球を使ってインターネット接続を提供するプロジェクト。CNESは,気球関連技術についての同機関の専門知識を提供することで,同プロジェクトを支援する。同時にGoogleからは,CNESが行う成層圏の長期気球観測キャンペーンへの協力を受ける。Project Loonは,Google社内で実験的なプロジェクトに取り組むGoogle Xで発案されたもので,特殊なアンテナを搭載した複数の気球を,航空機の高度よりも高い上空約18~20キロメートルの成層圏に飛ばし,地上のアンテナと接続することでインターネット網を構築する。プロジェクトは2013年6月に開始され,ニュージーランドで気球の打ち上げ実験が行われている。

  • (http://www.cnes.fr/web/CNES-en/7134-press-releases.php?item=9447) (http://www.google.com/loon/) (accessed 2015-01-07).

2014年の検索ワードのトレンド

GoogleとYahoo!はそれぞれ2014年の検索ワードのトレンドを発表した。Googleが2014年12月16日に発表した「Year in Search for 2014」によると,検索急上昇ワードは,米国では1位「Robin Williams」(ロビン・ウィリアムズ,8月に死去した俳優),2位「World Cup」(サッカーのワールドカップ),3位「Ebola」(エボラ出血熱),日本では1位「ワールドカップ」,2位「妖怪ウォッチ」,3位「ソチオリンピック」だった。一方,米Yahoo!が発表した「Year in Review」では,1位が「Ebola」,2位が「Minecraft」(ビデオゲーム,開発元のMojangはMicrosoftに買収された),3位が「Ariana Grande」(歌手のアリアナ・グランデ)。Yahoo! Japanが発表した「Yahoo!検索大賞」では,2014年にもっとも検索数が上昇したのは「羽生結弦」(フィギュアスケーター)だった。

  • (http://www.google.com/trends/topcharts#geo=US&date=2014) (https://www.yahoo.com/tech/top-10-searches-of-2014-c1417565661893.html) (http://searchaward.yahoo.co.jp/) (accessed 2015-01-07).

特許庁,中韓文献翻訳・検索システムを本格提供

特許庁は1月5日,中国語・韓国語の特許文献を日本語で検索可能な「中韓文献翻訳・検索システム」の本格版を同日から提供すると発表した。2014年11月から提供していた試行版と比べて,約200万件の中国文献が新たに検索可能になる。本格版提供後も随時文献を追加するとしている。本格版の文献蓄積範囲は,中国・韓国ともに2003年から2014年7月公開分まで。今後は,中国文献では,中国における文献公開から原則約3週間,韓国文献では原則約2か月で,本システムでの翻訳文の検索を可能とする予定だとしている。

  • (http://johokanri.jp/stiupdates/japan/2015/01/010663.html) (http://www.meti.go.jp/press/2014/01/20150105001/20150105001.html) (accessed 2015-01-07).

講談社,全コミック誌を電子化

講談社は1月5日,同社が刊行するすべてのコミック誌を順次電子化し,各電子書籍書店で配信することを決定したと発表した。まず「ヤングマガジン」「月刊少年マガジン」「週刊少年マガジン」の3誌について,紙の本誌との同時配信を開始し,2015年6月までには全誌の電子配信を実現する予定だとしている。同社ではコミック誌の電子書籍化のメリットとして,読者が大画面スマートフォン・タブレットなど,ライフスタイルにあった方法で読めるようにすることや,バックナンバーの販売による利便性向上などをあげている。

  • (http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/20150105comic.pdf) (accessed 2015-01-07).

Yahoo!,ツイート分析で電車遅延情報をいち早く提供

Yahoo! Japanは2014年12月18日,同社が提供する「Yahoo! リアルタイム検索」アプリに,Twitterの投稿から電車の運行状況をリアルタイムに抽出して,遅延・運休情報を知らせる「遅延なう」の機能を追加したと発表した。「Yahoo! リアルタイム検索」には,Twitterの膨大な投稿情報を分析して,話題のキーワードを表示したり,急上昇のキーワードをプッシュ通知する機能などがある。今回追加した「通知なう」は,Twitterの投稿をリアルタイムに解析して,電車の運行状況に関するツイートの上昇率から遅延や運休など各路線の運行状況を独自に抽出し,いち早くユーザーに知らせる機能。鉄道会社などによる公式の運行情報よりも早く遅延・運休の状況を知らせることができるとしている。

  • (http://pr.yahoo.co.jp/release/2014/12/18b/) (accessed 2015-01-07).

 
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