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気象情報が高度に利活用される社会を目指して
松本 康志
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2017 年 60 巻 2 号 p. 79-88

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著者抄録

気象情報は社会の基盤的な情報として,防災対応から日々の生活などのさまざまな分野で活用されている。気象庁は,スーパーコンピューターの計算能力向上を基盤にした精緻な数値モデル開発等による予測精度の向上と,ひまわり8・9号の観測データ等のビッグデータや対象区域の細分化によるきめ細かい気象情報をはじめとする新たな情報提供など,さまざまに充実を図ってきた。同時に,「気象庁防災情報XMLフォーマット」の策定など,気象情報を社会により広く,よりわかりやすく提供し,活用を促進する方策も講じてきた。近年の情報通信技術(ICT)の飛躍的な発展に伴い,即時的,自動的な情報処理による高度な利用が期待される。そのため,IoTなどに関する有識者や幅広い産業界の企業・団体からなる「気象ビジネス推進コンソーシアム」を2017年3月7日に発足させ,気象情報を活用して社会の生産性の向上を目指す取り組みを新たに開始した。

1. はじめに

気象情報は,さまざまな情報媒体を通じて皆さまの暮らしに浸透している。たとえば,毎日発表される天気予報は,生活の計画を立てるうえで,意識的・無意識的に活用されていることと思う。また,台風や集中豪雨などの気象災害のおそれがあるときや大きな地震が発生したときには,テレビ,ラジオ,インターネット,緊急速報メールなどを通じて,状況の通知や厳重な警戒の呼びかけが行われている。その他,航空機や船舶の運航に関する計画や,農作物の栽培・収穫に関する計画など,産業活動のさまざまな場面においても活用されている。

警報等の防災気象情報は,気象庁から国や地方公共団体の防災部局などへ直接提供する他,記者会見や気象庁Webサイトを通じて広く国民へ公表している(1)。また,気象庁が作成する気象情報や関連する各種データは,さまざまな情報媒体による国民一人ひとりへの周知や,産業界での活用を促進するため,民間に公開されている。さらに,情報の活用はそれを支えるICT動向に大きく依存するものであるため,気象庁は技術動向に応じた情報そのものの改善や,情報提供環境の充実にも取り組んできている。

本稿では,気象情報の作成から提供までの概要,気象情報の利活用を促進することを目的とした,気象庁のこれまで取り組み,そして今後推進していく取り組みの概要を説明する。

図1 気象庁が提供する気象情報の流れ

2. 気象情報の作成と提供

気象庁は,日々自然現象の観測を行い,観測データを収集し,データ解析による監視・予測を経て,作成した気象情報を国民の手元まで届けている(2)。これら気象データは,対象とする現象や時空間スケールなどに応じ多種多様であるとともに,各種技術の高度化に伴いより高頻度・高解像度なデータとなってきている。気象データは,まさにビッグデータである。

図2 さまざまな気象観測データの処理と利活用

2.1 観測とデータ収集

気象観測は,雷雨や集中豪雨といった短時間で局地的に発生する現象から,台風や梅雨前線のような長時間にわたる現象までを把握するため,さまざまな時間・空間スケールの観測データをできるだけ高密度で立体的に収集する必要がある。そのため気象庁では,全国約1,300地点に配置され地上気象観測(気温,降水量,風向・風速,積雪深など)を行う地域気象観測システム(アメダス),広範囲で降水や風の分布を把握する気象レーダー,世界最高水準の気象監視機能をもつひまわり8号・9号等を整備・運用している。その他,地震の発生場所や大きさ(マグニチュード),地面の揺れの強さ(震度)や位置の把握に必要な地震計・震度計,津波や海面水位の変動の把握に必要な潮位計など,情報発表に必要な自然現象の観測データを収集している。

さらに,気象庁自らが観測を行ったデータだけではなく,雨量計,地震計・震度計,潮位計データなどについては,他の国・地域機関や地方公共団体の観測データも収集し,気象庁の業務に積極的に活用している。また,世界気象機関(World Meteorological Organization: WMO)の枠組みの下,各国・地域の気象機関のもつ気象観測データとの交換を実施している。

2.2 解析・予測

主な解析・予測技術に,「数値予報」と「ナウキャスト」がある。

「数値予報」は,物理学の方程式により,気象に関する物理量(気圧,気温,風向・風速など)をスーパーコンピューターで計算して将来の大気の状態を予測する技術である。気象庁は1959年に日本の官公庁として初めて科学計算用の大型コンピューターを導入し,数値予報業務を開始した。数値予報では,三次元に配列された格子点(3)ごとの気圧,気温,風などの値を世界中から送られてくる観測データを使って求める。この初期値を基に,「数値予報モデル」と呼ばれるプログラムを用いて,未来の大気の状態の推移をコンピューターで計算する。気象庁では,コンピューターの計算能力の向上を基盤に,より精緻な数値予報モデルを開発し,現在では局地モデル(水平2km格子)や全球モデル(水平20km格子)など,対象とする気象現象や利用目的に応じた複数の数値予報モデルを運用している注1)

一方,「ナウキャスト」は,気象レーダーや雨量計のデータから求めた降水の強さの分布を基に,1時間先までの降水域の移動や発達・衰弱を予測する技術である。2014年8月より運用を開始した高解像度降水ナウキャスト(4)では,5分ごとに,30分先までは250m解像度で,35分先から1時間先までは1km解像度で降水分布を提供している。

図3 全球の大気を格子で区切ったイメージ図
図4 高解像度降水ナウキャスト

2.3 気象庁が提供する情報

気象庁では,気象,地震,津波,火山など,多種多様な観測データを収集し,解析・予測した後,気象状況として一般の方々にわかりやすい言葉で表現し,防災上の留意事項などは的確な言葉に置き換え文章化して,警報・注意報などの防災気象情報として提供している。

「全国一般風ノ向キハ定リナシ天気ハ変リ易シ但シ雨天勝チ」,これは明治17(1884)年6月1日に気象庁(当時は東京気象台)が発表した最初の天気予報である。当時は全国を対象としているが,現在では,天気予報は各都道府県をいくつかに分けた全国142区域からなる一次細分区域を対象に,気象警報・注意報は市町村(東京特別区は区)を原則とした1,772区域からなる二次細分区域を対象に細分化して発表している。

このように,国民や市町村などが,災害が発生しうる自然現象を理解し,適時的確な防災対応の判断・行動が行えるよう,予測技術の高度化に応じて,よりきめ細かい防災気象情報の提供を行っている。

3. 情報通信技術の進展と気象情報

前節の気象庁が最初に発表した天気予報の提供方法は,東京市内の交番に掲示されたのみであった。一方で,現在,わが国のインターネット人口普及率は83.0%(2015年)に,利用端末もスマートフォンが54.3%(2015年)になるなど1),情報通信技術が大きく変革し,誰でもいつでも容易に情報へアクセスできる状況にある。

気象庁は,国民一人ひとりへ気象情報を届けるため,近年の情報通信技術に適した対策を講じている。

3.1 気象庁防災情報XMLフォーマットの策定

気象庁は過去長年にわたり,気象警報,津波警報,地震情報などを,それぞれの情報の性質・利用形態などを考慮し,個別の気象庁独自の形式(フォーマット)で提供してきた。情報の種類や情報そのものの分量が少なく,情報の伝達がFAXや低速の通信回線の時代は,それぞれの個別フォーマットを用いることが問題視されることはなかった。近年,科学技術の進展やさまざまな防災課題に対応するため,高度にICT化された現代社会において,より詳細で高度化された防災情報の一層の効果的な活用が求められるにつれ,情報内容の変更に柔軟に対応できる統一フォーマットによる情報提供ニーズが高まってきた。そこで気象庁は,情報の種類によらない統一したフォーマットとして「気象庁防災情報XMLフォーマット」を策定し,2011年5月12日より使用を開始した(5)。策定にあたっては,XMLコンソーシアム注2)の協力を仰ぐとともに,検討途中でドラフトを公開し,より多くの利用者からの声を検討に反映させた。

XMLフォーマットによる提供により,気象庁から提供される約70種類ものさまざまな気象情報を機械的,統一的に処理することが可能となり,利用者はニーズに合わせて情報の加工を容易にできるようになった。

なお,XMLフォーマットの策定経緯等については,気象庁が刊行する『測候時報』にて報告しているので,ご覧いただきたい2)

図5 XMLフォーマット策定の概要図

3.1.1 XMLフォーマットの基本構造

XMLフォーマットは,気象や地震等の現象が異なっても,利用者がそれを意識せずに電文を処理できるような構造を基本とし,「管理部(control)」「ヘッダ部(head)」「内容部(body)」で構成されている(6)。

「管理部(control)」は,電文の配信を制御する情報に関する項目で構成されている。すべての電文において共通の構造とし,情報名称,発表時刻,運用種別(「通常」「訓練」「試験」等),編集官署名,発表官署名の項目が含まれる。

「ヘッダ部(head)」は,有効時間(いつ),情報種別(何が),および概要文(放送時の字幕スーパー等に用いられる見出し文)を中心に,電文を一意に特定し,利用上の分類を与える項目により構成される部分である。すべての電文において共通の構造とし,標題,発表時刻,基点時刻,失効時刻,識別情報,情報形態(「発表」「更新」「訂正」「取消」など),見出し要素等の項目が含まれる。

「内容部(body)」は,情報の種別により固有の項目から構成される部分で,ヘッダ部で共通化できない内容(電文固有の内容)が含まれる。

図6 府県天気予報のXMLフォーマットの概要

3.1.2 XMLフォーマットの概要(府県天気予報)

6は,府県天気予報のXMLフォーマットの概要を示している。

最新情報を含めた詳細については,解説資料,コード表,辞書等を気象庁Webサイトに掲載しているので,参照されたい(気象庁防災情報XMLフォーマット 情報提供ページ:http://xml.kishou.go.jp/index.html)。

3.2 ビッグデータ化する気象情報

気象庁が扱うデータには,アメダス,天気予報,警報・注意報など,日本各地を対象とした個々の容量は小さいがデータの種類や数が多いものや,気象衛星や数値予報など,面的・立体的(メッシュ状・3次元)な広がりをもち個々の容量そのものが大きいものがある。これらのデータは,先述のXMLフォーマットや国際ルールに基づいた形式(BUFR形式,GRIB形式)で提供しており,データ自体は無償で,商用利用や二次配布に制限を設けていない注3)。気象データは,オープン化された公的データであるとともに,まさにビッグデータである。

2015年7月より静止気象衛星「ひまわり8号」が正式運用を開始し,「ひまわり9号」が2016年11月に打ち上げられた。ひまわり8号・9号では,搭載されたカメラのバンド数が従来の5バンドから16バンドに増加する他,観測間隔も従来の30分ごとから10分ごと(日本域は2.5分ごと)に高頻度化,水平分解能も従来の2倍になるなど,世界最先端の観測機能を有している(7注4)。そのため,提供する気象衛星データの容量も大きく,1観測分で約1.38GB,1日分で約200GB(最大)となっている3)

予報・解析技術の改善のため,気象庁のスーパーコンピューターの性能を向上させており,1959年の導入時に比べて約1,000億倍の性能をもっている(8)。これを基盤に数値予報モデルの高精度化(空間分解能,時間分解能)が図られ,局地モデルは2km格子で1時間ごとに9時間先までの日本周辺の気象を予測しており,そのデータ容量は1日分で約22GBとなっている。また,高解像度降水ナウキャストは,実況解析と60分先までの5分間隔の予測データを5分ごとに提供しており,そのデータ容量は1日分で約23GBとなっている。

図7 気象衛星ひまわりの可視画像(左:ひまわり7号,右:ひまわり8号)
図8 気象庁のスーパーコンピューターの変遷

3.3 気象情報利活用の広がり

情報通信技術の活用により,気象情報を他の情報と組み合わせて分析する取り組みや,即時に個人へ情報提供する取り組み,過去の情報を高度に検索する取り組みなど,気象情報の利用の幅が広がっている。

気象は人間の行動に影響を与えるため,過去の気象データと商品の売り上げデータを比較し,その相関と気象予測を活用することにより,商品の売り上げ予測を行う取り組みが進められている。気象庁が,気象情報と,スーパーマーケットおよびコンビニエンスストアの実際の売り上げとの関係を調査した結果,気温が何度になると販売数が急増するかといった客観的な気象条件の推定が可能であることが示された。このことから,2週間先までの気象予測情報の販売促進等への活用が期待されている注5)

インターネットやスマートフォンのアプリを通じて,気象情報を即座に個人へ提供する取り組みも進められている。たとえば,Yahoo! JAPANでは,気象庁が発表した震度速報や津波警報・大津波警報をYahoo! JAPANトップページで自動掲出する取り組みや,防災速報アプリで気象警報,地震情報,津波予報,火山情報などをプッシュ通知する取り組みを進めている4)

先端IT活用推進コンソーシアム(AITC)では,新しい技術やデータセットの評価を行うことを目的に,気象庁から提供されたXMLフォーマットの気象情報を蓄積し,簡単に参照できるAPIを2018年8月(予定)まで公開している。過去の気象情報について,RESTやSPARQLによる高度な検索が可能となっている5)

4. 産業界における気象情報のさらなる利用に向けて

「平成27年版情報通信白書」(総務省)によると,わが国における気象データの流通量は2014年で8,789TB(見込み)と2005年から10倍以上に増加しているものの,実際に分析に活用している企業の割合は1.3%にすぎないことが推計されている6)

気象庁では,IoT,ビッグデータ,人工知能等の最先端技術を用いて気象情報をより高度に利用することにより,産業界での気象情報の利用を促すとともに,社会経済活動の生産性を向上させることを目指して,2016年度より国土交通省生産性革命プロジェクト「気象ビジネス市場の創出」に取り組んでいる(9)。

図9 国土交通省生産性革命プロジェクト「気象ビジネス市場の創出」の概要

4.1 国土交通省生産性革命プロジェクト「気象ビジネス市場の創出」

2016年より国土交通省では,わが国が人口減少時代を迎える中,経済成長の実現に向け,「社会のベース」「産業別」「未来型」の3つの分野の生産性向上に取り組む「生産性革命プロジェクト」を推進している。2016年11月25日の「国土交通省生産性革命本部(第4回)」において,「気象ビジネス市場の創出」が新たに選定された。

「気象ビジネス市場の創出」では,気象情報の提供,気象サービスの体質強化,気象サービスと産業界のマッチングの大きく3点に焦点を当てて施策を推進する。

第1に,「ユーザーコンシャスな気象情報の提供」として,気象庁が自らユーザーの目線に立ち,ビジネスの素材となる気象データの新たな提供,あるいは利用環境の高度化などに多角的に取り組んでいく。第2に,「気象サービスの体質強化」として,民間の気象事業者などによる気象サービスの提供を支援する取り組みについて全国的に展開し,併せて人材育成支援などを進めていく。第3に,「気象サービスと産業界のマッチング」として,産業界,気象サービス業界,それから気象庁も含め,さらにはICTやオープンデータの有識者等も加えた,「気象ビジネス推進コンソーシアム」を立ち上げた。

これら3本の大きな柱に沿った施策を推進することで,産業界が求める気象サービスの提供や,IoT等の最先端の技術による気象データを高度利用した産業活動(新たな気象ビジネス)を実現するための対話・連携を加速させ,わが国の社会経済活動の生産性を向上させることを目指している。

4.2 気象ビジネス推進コンソーシアムの設立

気象,情報,農業,製造,小売り,交通,物流,建設,金融,観光など,さまざまな分野の有識者,企業,団体からなる発起人の呼びかけに応じて,2017年3月7日に「気象ビジネス推進コンソーシアム」が設立した。

産業界における気象情報の高度な利用は,先端的な事業はあるものの,緒に就いたばかりである。そもそも気象情報には何があり,どのようなものであるか,それをどのように活用すれば効果的か,という情報のニーズが高い。そのためコンソーシアムでは,気象情報やその活用方法に関する各種セミナーを通じた啓発・普及,人材育成を進めるとともに,先端的な事例の調査・実証結果を共有することで,気象ビジネスの基盤づくりを進める。また,各種データのさらなる有効活用に必要な改善策について,ニーズの集約などの戦略的対話も進める。

このような取り組みを通じて,産学官が一体となって気象データによる生産性革命と成熟社会を促進するとともに,わが国のデータドリブン(データ駆動型)社会をリードしていくことを目指している。

4.3 気象情報の利用環境の改善

これまで気象庁には,気象情報を活用したサービス開発などのために手軽に気象情報に触れられる環境や,気象情報の種類や内容を解説するドキュメントの提供に関する要望が多く寄せられていた。そのような環境を利用者に提供できていないことが,気象情報の活用を妨げていた障壁と考えられる。

そのため2017年3月に,産業界の新規開発時などに気象情報を積極的に活用できるように,「気象データ高度利用ポータルサイト」を気象庁Webサイトに開設した注6)。本ポータルサイトは,気象データを解説するコンテンツ,取得するコンテンツ,さらに活用するために参考となるコンテンツから構成されている。

1つ目のコンテンツでは,気象庁が保有・提供する各種情報を網羅的に整理した「気象庁情報カタログ」や,気象庁が提供する情報に変更があった場合に公表する技術的な解説資料である「配信資料に関する技術情報」を掲載している。

2つ目のコンテンツでは,最新および過去のアメダス観測データや,過去の1か月予報に関する気温予測データをCSV形式でダウンロードできる他,数値予報データのファイル形式等を確認してもらうためにサンプルデータを掲載している。また,XMLフォーマットの気象情報について,発表された情報を逐次掲載するとともに,Atomフィード(更新情報の通知)も掲載することで利用者が容易に取得できる環境(“PULL型”の提供)を整えている。2種類(毎分更新し直近少なくとも10分入電を掲載する「高頻度フィード」,毎時更新し数日間の全入電を掲載する「長期フィード」),4分類(天気予報など定時に発表する気象情報を掲載する「定時」,警報など随時発表する気象情報を掲載する「随時」,地震・火山に関する情報を掲載する「地震火山」,その他の情報を掲載する「その他」)のフィードを用意しているため,利用者の用途に応じた取得が可能となっている。

3つ目のコンテンツでは,気象データと組み合わせて利用するデータとして,気象庁の気象観測地点の位置情報を,また気象データの利活用事例として,気象庁がこれまで関連団体と取り組んできた気候リスク評価に関する調査・研究結果を掲載している。

今後も,前節のコンソーシアムの取り組みや気象情報利用促進を支援するため,利用者の意見など踏まえてコンテンツの拡充に取り組み,気象庁のもつ情報の利用環境改善を進めていく予定である。

5. おわりに

気象庁の取り組みの一端を紹介した。気象情報は社会経済活動の生産性を向上させるポテンシャルを有していると考えている。本稿を通じて,気象情報に関心をもっていただければ幸いである。気象ビジネス推進コンソーシアムは,以下のWebサイトで会員を募集しているので,ぜひ参加いただきたい(気象ビジネス推進コンソーシアム: http://www.data.jma.go.jp/developer/consortium/index.html)。

執筆者略歴

  • 松本 康志(まつもと こうじ) k_matsumoto@met.kishou.go.jp

気象庁総務部航空気象管理官付調査官(2017年5月現在)。東北大学大学院 地球物理学専攻(前期課程)修了。気象庁入庁後,観測業務や地球環境・海洋業務,情報提供・オープンデータ等を担当する他,文部科学省(出向)では環境エネルギーに関する研究開発業務を担当。現在は,航空気象業務に関する計画等を担当。

本文の注
注1)  数値予報モデルで予測できる気象現象の規模は格子間隔の大きさに依存しています。格子間隔が20kmの全球モデルでは,高・低気圧や台風,梅雨前線などの水平規模が100km以上の現象を予測することができます。格子間隔が5kmのメソモデルになると,局地的な低気圧や集中豪雨をもたらす組織化された積乱雲など水平規模が数10km以上の現象を予測できるようになります。目先数時間程度の大雨等の予想には2km格子の局地モデルを使用しています。※気象庁のWebサイトより引用。

注2)  XMLコンソーシアムは2010年3月をもって解散し,その活動は「先端IT活用推進コンソーシアム(AITC)」に継承されている。

注3)  気象情報は,リアルタイムで提供が行われる大容量のデータであるため,情報提供に係る通信機器等の維持管理には相当のコストがかかる。一方で,気象情報は商用利用が可能であるため,特定の営利団体に対する情報提供コストを国費で賄うことは,公平性を欠くと考えられる。そのため,必要な通信機器等の維持管理コストを,情報提供を受ける者が応分負担することとし,その業務を気象業務法に基づき一般財団法人気象業務支援センターが実施している。

注4)  地球の雲の状態を観測するためにひまわり8号・9号に搭載されている可視赤外放射計は,可視域3バンド,近赤外域3バンド,赤外域10バンドの計16バンドのセンサーをもっています。また,ひまわり8号・9号では,静止衛星から見える範囲の地球全体の観測を10分毎に行いながら,特定の領域を高頻度に観測することができます(例:日本域を2.5分毎)。さらに,空間分解能は可視で0.5km~1km,近赤外と赤外で1km~2kmとなっています。※気象庁 静止気象衛星:ひまわり8号・9号より引用。

注5)  “気候リスク管理技術に関する調査(スーパーマーケット及びコンビニエンスストア分野):販売促進策に2週間先までの気温予測を活用する”. 気象庁 http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/taio_pos.html

注6)  気象データ高度利用ポータルサイト:http://www.data.jma.go.jp/developer/index.html

参考文献
 
© 2017 Japan Science and Technology Agency
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