抄録
近年,企業活動のグローバル化とデジタル化の進展により,サプライチェーン・マネジメントや全社的な情報の流れの効率化が喫緊の課題となり,日本企業において価値創造に関わる多様な活動間の調整を効率的に行うため基幹系IT システムの導入と運用が進められてきた.本研究の目的は,日本のものづくり企業5 社の探索的な事例研究にもとづき,基幹系IT システム導入と運用の実態,および共通してみられる重要な課題を解明することにある.本稿の意義は,IT システムの進化という視座から,新たなIT システムや既存IT システム,ものづくり組織能力を統合する際に生じる問題の特徴とその克服に向けた企業活動の動態的なプロセスを明らかにしたことにある.さらに,基幹系IT システムの導入・運用の進化プロセスを総合的に分析する枠組みを提示したことも重要な貢献である.