日本看護管理学会誌
Online ISSN : 2189-6852
Print ISSN : 1347-0140
ISSN-L : 1347-0140
資料
業務改善に取り組む看護師長の暗黙知
寺島 ひとみ
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 13 巻 1 号 p. 67-75

詳細
抄録

本研究の目的は,看護師長個人が,病棟の業務改善に対処するためにその経験を通してどのような暗黙知を蓄積し,使っているのかを明らかにすることである.A病院に勤務する3名の看護師長を対象に,参加観察と半構成的面接法により業務改善における意図や考えを,質的に内容分析した.その結果,8つのカテゴリーと,22のサブカテゴリーを抽出した.本論文では,看護師長の業務改善を効果的に実践していく中で用いられていた暗黙知である【変化につながる鍵】について詳述した.【変化につながる鍵】は,看護師長がスタッフの生み出す効果的な力量とニーズの発見につながる患者や家族からの声を用い,自分の行動によってその場を生成・活用させるものであった.それは変革につながるナレッジ・リーダの知を表すもので,看護を取り巻く環境の変化に対処できる業務改善を可能にするものであった.

記録単位数の分布から,看護師長はスタッフを管理する傾向にあること,係長に対して積極的な権限委譲が行えていないことが推測された.このことから看護師長は,より病棟の外に目を向け,組織で業務改善に取り組むことが必要であることが示唆された.

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本看護管理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top