歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Streptococcus mutansの産生する非水溶性グルカンを分解する酵素に関する研究
II. エンド-α-1, 3グルカナーゼによるStreptococcus mutansのグルカン合成の抑制
竹原 直道
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 21 巻 3 号 p. 543-551

詳細
抄録

Streptococcus mutms OMZ176株の菌体外グルコシルトランスフェラーゼとスクロースとを作用させてガラス壁上に形成されたグルカン・フィルムは, 高濃度のα-1, 3グルカナーゼを作用させても殆んど除去されなかった。一方フィルム形成時にα-1, 3グルカナーゼを共存させると酵素量に応じてその形成は著明に抑制された。α-1, 3グルカナーゼの共存によって非水溶性グルカン画分の合成は著明に抑制され, これに対応して水溶性グルカン画分の量は増加した。水溶性グルカンのα-1, 3グルコシド結合含量 (割合) は用いたα-1, 3グルカナーゼ量に応じて低下し, 一方非水溶性グルカンのそれは対照グルカンに比べて増加した。これらの結果から, α-1, 3またはα-1, 6結合したグルコース残基の総量は, 何れも非水溶性画分では対照グルカンに比べて低下し, 水溶性グルカンでは増加していることが判った。α-1, 3グルカナーゼの共存は非水溶性グルカンの粘性を著明に低下させたが, 水溶性のそれは殆んど変化させなかった。またゲル濾過の結果から, 水溶性グルカンはα-1, 3グルカナーゼにより著しく低分子化していたが, 非水溶性グルカンは高分子のままであった。対照も含め全ての非水溶性グルカン標品は, α-1, 3グルカナーゼおよびα-1, 6グルカナーゼに対してそれぞれ高および低感受性を, 一方水溶性グルカンは高濃度のα-1, 3グルカナーゼ存在下に合成されたものを除いて何れのグルカナーゼに対しても高感受性を示した。以上の成績から, α-1, 3グルカナーゼによるグルカン・フィルムの形成の抑制は主として同酵素が非水溶性グルカン画分中のα-1, 3グルコシド結合の生成を抑制し, またその一部を可溶化させることにより非水溶性グルカンの合成を著明に抑制し, またそのα-1, 6結合含量を減少させることにより粘着性を低下させる結果であることが示唆された。

著者関連情報
© 歯科基礎医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top