歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Streptococcus mutansの産生する非水溶性グルカンを分解する酵素に関する研究
I. Streptomyces chartreusis F2株の産生するエンド-α-1, 3グルカナーゼの精製と性状
竹原 直道
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1979 年 21 巻 3 号 p. 529-542

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抄録

Streptomyces chartreusis F2株がStreptococcus mutansの産生する非水溶性グルカンを唯一の炭素源として誘導的に菌体外に産生する非水溶性グルカン水解酵素 (F2酵素) の精製を行った。出発粗酵素 (培養液のamberlite CG 50吸着画分) はDE 52セルロースおよびCM 52セルロース・カラムクロマトグラフィーおよびBio-Gel A-1.5mによりゲル濾過することによってSDS加ポリアクリルアミドゲルスラブ電気泳動により単一の蛋白バンドとして検出されるまでに精製された。精製度は6.4倍, 回収率は27%であった。精製F2酵素のポリペプチド鎖の分子量は同電気泳動により約68, 000と推定された。尚精製酵素標品は分画分子量30万のメンブレンフィルターをまったく通過しないことから, 同標品はポリペプチド鎖のオリゴマーあるいは凝集塊を形成している可能性も考えられた。精製F2酵素の至適pHは5.5-6.0, 至適温度は55℃, また65℃ 10分間の加熱でほとんど失活した。同酵素活性は1mMのMnCl2, メルチオレートによって完全に抑制された。S.mutans OMZ 176株の非水溶性グルカンを基質とした時のKm値は1.54mMグルコース濃度に相当するグルカン量であった。同酵素はエンド型の作用様式を示した。その基質特異性から精製F2酵素は多糖類のα-1, 3グルコシド結合を開裂することが示された。同酵素によるOMZ 176株の非水溶性グルカンの主な最終分解産物は2~7ケのグルコース残基より成る少糖であった。以上の結果からF2酵素はエンドα-1, 3グルカナーゼであることが明らかとなった。本酵素は他の多くのS.mutans菌株由来の非水溶性グルカンを分解した。その分解はデキストラナーゼの共存により促進された。

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