抄録
Streptococcus mutans strain FILのsucrose代謝の機構を明らかにするため, これをglucoseおよびsucroseを炭素源として連続培養しそれぞれの菌の乳酸産生速度を調べた。Sucrose培養菌はglucoseおよびsucroseから同程度の速さで乳酸を産生したがglucose培養菌のsucroseからの乳酸産生速度はglucoseからのものより小さかった。Cell-free extractのinvertaseの比活性はどの培養条件のものでもほぼ等しかった。しかしsucrose培養菌をトルエン処理したものはphosphoenolpyruvate (PEP) とsucroseとを共に反応させるとphosphorylsucrose, glucose 6-phosphate (G6P), fructose 6-phosphate (F6P) およびfructoseを生成したがglucose培養菌のものはphosphorylsucroseをほとんど生成せず, またほかの生成物の量も少なかった。これらの結果はsucroseがPEP-dependent phosphotransferase system (PEPPTS) によってphosphorylsucroseとしてとり込まれた後にG6Pとfructoseに分解されること, この系がsucroseを炭素源として培養した菌で誘導されることを示していた。