抄録
ラット顎下腺の唾液分泌機能は交感, 及び副交感両神経の支配を受けており, それぞれの刺激は対応する受容体で識別される。そこで生後熟成が進行中のSD系雄性ラットに各種カテコラミンの投与を行ない, 顎下腺唾液の分泌動態, あるいは唾液蛋白質成分の分画から腺の機能的な成熟過程を追求した。
その結果, 唾液分泌応答では実験が可能となる2週齢ですでに薬理学的なα-とβ-型の応答差がみられ, 特有の発育段階を経て, 7, 8週齢で成熟型の応答に至った。ディスク電泳法によるβ-型の蛋白質成分像では3段階の発育過程を経て, 6週齢以後に成熟型に達した。これに対し, α-型成分像は5週まではα-刺激を行なってもβ-型と同様の蛋白質像を示した後, 7週齢で成熟型となった。
以上から, ラット顎下腺の生後発育に伴う交感神経性受容体は, 唾液分泌応答に関する機能と, 唾液蛋白質成分の決定機構にそれぞれの特殊性の存在することが考えられた。