歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
機能的役割の異なる二種の開口反射機構に関する研究
宗形 芳英
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1981 年 23 巻 3 号 p. 534-547

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抄録

α-クロラロースで麻酔したネコの歯根膜刺激により, 潜時の異なる二種類の開口反射応答が導出できる。潜時16~20msecの応答 (Late response: LR) は潜時4~6msecの応答 (Early response: ER) に比べ, 閾値が小さく下歯槽神経麻酔による影響もうけにくいことから歯根膜中の触・圧覚受容器により誘発される応答であると考えられる。一方, ERは歯髄刺激により誘発される潜時4~6msecの唯一の応答 (Nociceptive response: ER') と生理学的性質が似ており, 下歯槽神経麻酔による効果がER'と同一であることから歯根膜中の痛覚受容器により誘発される応答であると考えられる。
次に, この二種の応答 (ER, LR) は下顎骨の振動刺激や咬筋神経電気刺激により異なった影響をうける。LRは40~350Hzで振幅が50μ 以上の振動刺激により抑制される。一方, ERは50~250Hzで振幅が250μ以上の振動刺激で抑制効果がみられる、これらの抑制効果は, 顎関節嚢の麻酔によりなんらの影響もうけない。さらにERは咬筋神経中のGroup II線維が興奮する刺激強度以上で刺激を行なったときにのみ抑制効果がみられるのに対し, LRはそれ以下の刺激強度によっても抑制される。
以上のことから, 歯根膜中の痛覚受容器により誘発されるERに観察される抑制効果は閉口筋中の筋紡錘二次終末の興奮によるものであり, 触・圧覚受容器により誘発されるLRの抑制効果は筋紡錘一次終末の興奮によるものと考えられる。

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