歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
歯垢中の酸拡散バリアーとしての不溶性グルカンの役割
北條 祥子樋口 允子
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1981 年 23 巻 3 号 p. 527-533

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抄録

Streptococcus mutansの不溶性グルカンのう蝕誘発性における役割を明らかにするため, S.mutans PK1株とその不溶性グルカン生成能の低下した変異株を人工口腔を模した連続培養装置で培養し, ガラス電極, 抜去歯表面に菌塊 (モデル歯垢) を形成し, 両者の菌塊の性状, pH低下, 菌塊形成下のエナメル脱灰の程度を比較した。親株の菌塊は不溶性グルカンを主体とし, 固着性で歯垢内部と外液pHの間には約2.0のpH勾配が生じた。また, 歯垢内部の酸は中性の緩衝液による洗浄では容易に除去されずpHの回復に長時間を要した。他方, 変異株の菌塊は可溶性グルカンを主体とし, 付着力は弱く菌塊内外にpH勾配がみられなかった。親株の菌塊付着下のエナメル表面の脱灰は変異株に比して著しく進行していた。以上の結果から, S. mutansの不溶性グルカンは歯垢内で生成された酸の拡散バリアーとなり歯垢内pHを長時間低く保持し, これがエナメル脱灰へ導くことに一役を担っていると帰結された。

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