歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
カエル口蓋辺縁部より誘発される閉口筋の興奮および抑制反射
山崎 博史
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1983 年 25 巻 4 号 p. 1057-1072

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抄録

カエルは上顎に非常に多くの小さな歯を持っており, それらは上顎の歯列を形成している。しかしカエルの歯には歯根膜は存在しない。口蓋粘膜は上顎歯列の内側において, 口蓋堤と呼ばれる隆起を形作っている。本実験において, 著者は口蓋堤より生ずる新しい顎反射を見い出した。口蓋堤に存在する閾値の低い, 速順応性の動き受容器に機械的刺激を加えると, 一過性の閉口反射が誘発される。しかし高閾値の遅順応性の動き受容器を機械的に刺激した場合には, 逆に閉口筋活動が抑制された。また口蓋堤に分布する求心性神経の電気刺激によっても, 機械的刺激の場合と同様の反射が誘発された。すなわち神経を刺激電圧0.4Vで弱刺激すると, 刺激の持続する間, 閉口反射が観察される。しかし刺激電圧を0.9Vに高めて強刺激した場合には, あらかじめ誘発させておいた閉口筋活動が抑制をうけることが明らかになった。
口蓋堤は触刺激に対する感度が非常に良く, 顎運動の反射的調整に関与している。また口蓋堤の役割と歯根膜のそれとは, 機能的に類似している。カエルにおいて観察された閉口反射は, 温血動物における歯根膜-咬筋反射に似た反射であることが考察された。

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