歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
常生歯歯根膜の線維構築に関する研究
土屋 博
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1983 年 25 巻 4 号 p. 1073-1089

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抄録

常生歯歯根膜の線維構築を明らかにするとともに, Sicherによって報告された “中間叢” の存否を確認することを目的として, ラット切歯歯根膜を光線および走査型電子顕微鏡を用いて観察した。
ラット切歯の歯根膜は歯軸に平行に走る線維 (平行線維) と, 歯根膜隙をセメント質から歯槽骨へ横断する線維 (横断線維) の2つの走行を異にする線維要素から構成されている。
形成端の歯根膜隙に散在する微細な平行線維は歯肉側に向うに従って太さと数を増しながら, 次第に歯根膜隙中央部に集まり, 第2臼歯近心部近くで扁平な板状線維束を形成する。
セメント質および歯槽骨から別個に起こる横断線維は, 次第に歯根膜隙中央部に伸び出し, 第2臼歯近くでそれぞれ扁平な板状線維束を形成する。その後第1臼歯の近心部で両者は連結し, 横断線維が完成する。
形成端に近い領域では平行線維が主体をなしているが, 歯槽頂に近づくにつれて横断線維がこれに替って主体をなすようになり, この線維群が歯の固定・維持の主役を演ずると思われる。
Sicherが特に常生歯で述べているいわゆる “中間叢” は, 板状の線維形態が薄切される方向によって現われる虚像であると考えられる。

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