歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
生後熟成過程にみられるラット顎下腺のアドレナリン性α-受容体機能の変化
高田 登
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1983 年 25 巻 4 号 p. 894-909

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抄録

生後成長に伴うラット顎下腺の機能的完成過程を腺に存在するα-レセプターとそのサブユニットについて, 2週から8週齢群ラットから調製した膜標品に対する放射性リガンドの特異的な結合性から観察した。α-, α1-, α2-各レセプターに対する放射性リガンドはそれぞれ [3H]-ジヒドロエルゴクリプチン ([3H]-DHE),[3H]-WB-1401 ([3H]-WB), 及び [3H]-クロニジン ([3H]-Clonid) を用いた。離乳期以後のラットはすべて固型飼料 (CE-2) と水を自由に与えて飼育した。
成熟ラットについて行ったScatchardプロットによる観察結果では解離定数 (KD) 及びレセプター密度 (Bmax) はそれぞれ [3H]-DHEでは0.81nM及び7.4pM,[3H]-WBでは0.29nM及び68.3pM, また [3H]-Clonidでは0.52nM及び7.4pM/mg膜蛋白であった。発育期ラットでは [3H]-DHEと [3H]-ClonidのBmax値が2週齢ラットで高い出現を示したが, 3週齢になると急速に減少した。その後, この値は4週齢で再び高い上昇を示し, その後次第に減少して8週前後になって成熟ラットの示す値となった。[3H]-WBの結合量は加齢と共に徐々に増加を続けて成熟ラットの示す値に致った。各放射性リガンドに対するレセプターの親和性は2週齢ラットではいずれも低い値であつた。しかし成長に伴う動態はBmax値の示す経過とは一致しなかつつた。以上の結果から, 成長に伴うラット顎下腺のアドレナリン性α-レセプター, 特にそのサブユニットはそれぞれ独自の発育過程を有し, 更に腺細胞の数的増加, 分化。あるいは転化に関連した固有の応答性を示したから完成するようで, 特にこれは3~4週齢における離乳期で著しいものと考えられた。

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