歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
舌上皮組織における細胞増殖に関する日周変化
日野 晃伸陣内 研一横田 昌彦森脇 一成大西 正明西連寺 永康大原 弘
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1983 年 25 巻 4 号 p. 915-923

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抄録

CaHf/Heマウスの舌上皮基底細胞の増殖に関する日周変化を明らかにするために, 3H-チミジン標識によるオートラジオグラフを用いて, 夜間標識実験を行ない, 先に報告した昼間標識実験の結果と比較して次のような結論を得た。
1) 標識率および分裂細胞頻度の日周変化
標識率および分裂細胞頻度の日周変化は, 夜間 (17:00および3:00) で高く, 昼間 (7:00および13:00~17:00) で低い値であった。また, 舌乳頭の部位別に標識率の差があり, 先端部で低く基部付近で高く, それぞれ日周変化が観察された。
2) 細胞周期時間
PLM曲線よりMendelsohn&Takahashiの方法により求めた夜間標識実験の細胞周期の各パラメータは, Tc=33.6時間, TG2+0.7TM=3.6時間, Ts=6.1時間, TG1+0.3TM=23.9時間であった。この値を先回の昼間標識実験で得た値と比較すると, 細胞周期時間で5.0時間, また, S期およびG1期で2.5時間ほど短くなった。
3) 標識細胞の分化層への移行からみた細胞周期時間の算定はC3Hマウス舌上皮基底細胞ではBrown&Oliverの方法に適合せず, 実験結果は細胞周期時間より細胞交替時間を示しているといえる。舌上皮細胞交替時間は約60時間であった。
4) 基底細胞が分化層へ移行開始する時間は夜間で8.0時間, 昼間で14.5時間であり, G1期の間であった。ただし, 舌上皮においても皮膚におけるようなEPU (Epidermal Proliferative Unit) の存在が想定されるので, 基底細胞の日周変化にしたがう細胞増殖によってもたらされた増殖細胞のすべてが分化層に移行するのではないものと推察される。

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