歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
過剰な咬合圧による歯槽骨変化
山田 俊二
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1983 年 25 巻 4 号 p. 961-989

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抄録

雑種成犬10頭を用い, 下顎片側の第1大臼歯に高い鋳造冠を装着した場合, 上顎の対合歯の歯槽骨ならびに隣在骨質にどのような構造変化が起こるかを観察した。動物は鋳造冠装着後29日から141日まで飼育した。
各実験期間の前半にはテトラサイクリンを, 後半にはカルセインをそれぞれ連続注射した。屠殺後, 上顎第4小臼歯部, 第1大臼歯部において前頭断大研磨片を作製し, マイクロラジオグラフィーと螢光顕微鏡法とを用いて比較観察した。
咬合圧の強く加わった固有歯槽骨の歯根膜側では, 実験開始後まもなくから吸収の活発な改造が進行するようになり, その結果, 骨梁分布は疎になり, 歯根膜腔は拡大する。一方, 海綿骨部においては, 実験開始直後から骨形成の活発な改造が進行し, その結果, 骨梁は次第に太くなり, その分布密度を増す。このような変化は, 実験開始後7~8週以降になると次第に低下する。上顎骨の外側を占める緻密骨のうち, 特に眼窩に面する部分では, 実験開始後まもなく, その眼窩側に層状の骨形成が始まりその幅を増すが, 7~8週以降になるとそれは次第に低下する。一部の個体で, 実験側の上顎骨と縫合を介して接する頬骨, 口蓋骨鉛直板にも, 術後まもなくから, 骨質の形成を主とする内部改造の活発化が見られた。しかし, 口蓋骨水平板には変化は現われなかった。

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