抄録
サケ科魚類の口腔および咽頭には多数の歯が植立し, その分布状況は骨の形態や配置と共に属や種の重要な分類形質として認められている。一方, サケ科魚類数種においては成熟期に達すると口部の骨格系および歯系に著るしい性差が生ずると報告されている。しかし, その詳細については不明なことが多い。そこでサケ科サケ属サケ, Oncorhynchus keta, の産卵期成魚の口部骨格系および歯系に関してその大きさや歯胚率等について測定し雌雄間で比較した。サケ雄成魚の口部を構成する骨は同年齢・同体長の雌成魚に比べて大きく, それら骨上に植立する歯の長さも大きい。この傾向は口部両顎を構成する骨や歯においてより顕著であった。さらに, 雄成魚の顎骨上の歯の数は雌成魚より少ないが, 機能歯の割合は高く, 脱落歯の数も多い。このような性差は産卵・受精期における雄成魚の攻撃的行動等の生活習性と深く関連していると推測された。