骨吸収の際に主役をなす細胞は破骨細胞であるということは異論のないところであるが, その過程において骨芽細胞が重要な役割を果しているらしいことが主として
in vitroの実験から最近提案されている。そこで本実験は
in vivoにおける骨吸収過程における骨芽細胞の関与の有無について形態的に明かにしようとしたものであるが, 更にこれら形態変化とともに血清カルシウム値および血漿中ビタミンD
3代謝産物量を同時に検索し, それらの関連性について検討を加えたものである。
低カルシウム・ビタミンD欠乏食で飼育した成長期ラットの骨組織はクル病の状態を呈しており, この動物に生理量のビタミンD
3を投与すると, 主として骨髄側に骨吸収を生じた。その過程を検索すると, まずビタミンD
3投与後6時間で血漿中1α, 25 (OH) 2D
3が上昇し, 高値を示し, それと同時に紡錘形を呈していた骨芽細胞に形態変化が生じ, 立方形細胞となった。その後, 投与12時間目になると破骨細胞数の増加および血清カルシウム値の上昇がみられた。更にその後, 骨吸収面の拡大が起こり類骨組織の減少がみられ, 骨組織が改善された。また経時的に検索した破骨細胞数の増加は多核の細胞によるもので, 単核の細胞数に変化はなかった。
以上のごとく, 破骨細胞性骨吸収が起こる以前の初期過程において, 骨芽細胞の形態変化が血漿中1α, 25 (OH)
2D
3の上昇と関連してみられたことは, 1α, 25 (OH)
2D
3がそのリセプターをもつ骨芽細胞に直接作用し, 続いて起こる破骨細胞数の増加および活性化に何らかの役割を果たしていることを示唆するものである。
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