歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
水酸化カルシウムを貼布した歯髄切断部の初期石灰化に関する微細構造学的研究
宇佐美 祐一
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1987 年 29 巻 3 号 p. 293-331

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抄録

水酸化カルシウムを貼布した歯髄切断部の初期石灰化機構を明らかにする目的で, サルの切歯を用い, 実験的に生活歯髄切断, 水酸化カルシウム貼布を行い, 電子顕微鏡を用いた微細構造学的検索並びにエネルギー分散型X線分析装置 (EDX) による元素分析を行った。
術後4日で, 水酸化カルシウムと接した歯髄は壊死に陥り, 術後7日で, 壊死層直下の変性壊死細胞の細胞膜や小胞に, 電子鍍の高い球状顆粒 (直径10~100nm) が骸された。術後14日, 壊死層は均質, 無構造となっていたが, その直下の壊死細胞および完全または部分的にほぐれたコラゲン細線維に, 針状結晶様構造物の析出が認められた。術後32日, 骨様象牙質が観察され, その深層では術後14日と同様の結果が得られた。EDXによる分析の結果, 電子密度の高い球状顆粒および針状結晶様構造物よりCaとPが検出された。
以上の結果より, 水酸化カルシウムを貼布した歯髄切断部の初期石灰化は壊死層直下で開始し, 細胞死により石灰化がinitiateされることが示された。

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