歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
ラット切歯エナメル芽細胞の遠心端部における膜性小管状構造の立体的観察
大御 覚
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1987 年 29 巻 3 号 p. 332-362

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抄録

ラット切歯エナメル芽細胞を分化期から成熟期まで細胞内小器官の立体微細構造を明らかにすることを目的とし, 特に各時期におけるエナメル芽細胞遠心端にみられる小管状構造に注目した。
材料には雄ラット上下顎切歯を用い田中ら (1984) のA-ODO法を応用し, 細胞割断面からオスミウム可溶性基質を除去し, 膜性小器官を浮き彫りにしてSEM観察を行なった。
エナメル芽細胞遠心端部にはいずれの時期においても小胞および小管状構造の網目からなるtubulo-vesicle構造が存在し, それは主に遠位閉鎖堤に相当する部位でRERから直接するSERにより構成される網目であり, 遠心端細胞膜に近接して終わっていた。この構造は特に基質形成期のTomes突起内に著しく発達していた。
この滑面の小管状構造物の多くはすでに報告されているACPase活性陽性かつZIO染色可染性の小胞, 小管構造と同一のものであり, 従って遠心端部におけるライソゾーム酸素の形成, 分泌に関与する可能性, 分泌に伴う膜のrecycling機構との関連性, ならび一部は脂質を介する細胞内カルシウム調節機構に関与している可能性などが示唆された。また形態的特徴から遠心端部における小管状構造はGolgi-GERI系とは独立したライソゾーム合成系である可能性も示唆された。

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