歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
29 巻, 3 号
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  • 伊藤 一三, 藤村 朗, 会田 則夫, 大滝 洋, 野坂 洋一郎
    1987 年 29 巻 3 号 p. 257-266
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ヒト大臼歯の髄室床の中に副根管が存在することがあり, また分岐化傾向の強い小臼歯の根面溝内にも副根管が比較的多く存在するという報告がある。しかしながら副根管については明らかでない点が多い。
    そこで, 上下顎第1大臼歯および上顎小臼歯108歯を用いSEMにて副根管の検索と形成過程について考察した結果次の如くであった。
    1) 副根管の出現頻度は根分岐面において, 上顎第1大臼歯で75.0%, 下顎第1大臼歯で46.4%であり, 上顎小臼歯根面溝で近心面が20%, 遠心面が50%であった。出現個数はすべての歯種, 部位とも2~3個であった。開口部での直径は20~100μmであった。分布域は根分岐部中央に多く, 根面溝内では根尖近くに多かった。
    2) 副根管は根未完成歯では20~30個と多く機能歯では約1/10に減少していたことから加齢とともに減少していくものと考えられた。
  • 客本 斉子
    1987 年 29 巻 3 号 p. 267-292
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    雌雄マウス顎下腺より調製した細胞質ならびに核画分中のアンドロゲンレセプターを, 合成アンドロゲン 〔3H〕 R1881をリガンドとしてハイドロキシアパタイト法により測定した。その結果, レセプターの一搬性状には雌雄差は認められないが, その量は核レセプターは雄 (1,052fmol/mgDNA) で雌 (32fmollmgDNA) より著明に高く, 一方細胞質レセプターは雌 (512fma1/mgDNA) で雄 (368fmol/mgDNA) より有意に高かった。すなわち雄では全レセプター量の74%が核画分に, 残り26%が細胞質画分に見い出される一方, 雌では94%が細胞質画分に見い出され核画分にはほとんど検出されなかった。従って顎下腺アンドロゲンレセプターの細胞質ならびに核画分への分布には性差が認められることが判明した。さらに雌にtestosteroneを投与し両画分に検出されるレセプターの変動を調べたところ, 投与後1時間で細胞質レセプターが急激に減少し, 同時に核レセプターが増加した。その後細胞質レセプターは徐々に回復 (replenishment) し, 核レセプターも投与前のレベルまで減少した。なおa両レセプターの回復に要する時間は投与testosterone量に依存した。すなわちatestosterane量の多いほど細胞質レセプターのreplenishmentならびに核レセプターの投与前レベルへの減少に時間を要した。従ってこれらの変化は血中のアンドロゲンの濃度変化とパラレルであることが示唆された。また, 細胞質レセプターのreplenishmentは蛋白合成阻害剤のcycloheximideでは阻害されるが, RNA合成阻害剤のactinomycinDにより阻害されないことより, この過程は蛋白合成を介して起るものの, その調節部位は転写後レベルであることが示唆された。
  • 宇佐美 祐一
    1987 年 29 巻 3 号 p. 293-331
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    水酸化カルシウムを貼布した歯髄切断部の初期石灰化機構を明らかにする目的で, サルの切歯を用い, 実験的に生活歯髄切断, 水酸化カルシウム貼布を行い, 電子顕微鏡を用いた微細構造学的検索並びにエネルギー分散型X線分析装置 (EDX) による元素分析を行った。
    術後4日で, 水酸化カルシウムと接した歯髄は壊死に陥り, 術後7日で, 壊死層直下の変性壊死細胞の細胞膜や小胞に, 電子鍍の高い球状顆粒 (直径10~100nm) が骸された。術後14日, 壊死層は均質, 無構造となっていたが, その直下の壊死細胞および完全または部分的にほぐれたコラゲン細線維に, 針状結晶様構造物の析出が認められた。術後32日, 骨様象牙質が観察され, その深層では術後14日と同様の結果が得られた。EDXによる分析の結果, 電子密度の高い球状顆粒および針状結晶様構造物よりCaとPが検出された。
    以上の結果より, 水酸化カルシウムを貼布した歯髄切断部の初期石灰化は壊死層直下で開始し, 細胞死により石灰化がinitiateされることが示された。
  • 大御 覚
    1987 年 29 巻 3 号 p. 332-362
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ラット切歯エナメル芽細胞を分化期から成熟期まで細胞内小器官の立体微細構造を明らかにすることを目的とし, 特に各時期におけるエナメル芽細胞遠心端にみられる小管状構造に注目した。
    材料には雄ラット上下顎切歯を用い田中ら (1984) のA-ODO法を応用し, 細胞割断面からオスミウム可溶性基質を除去し, 膜性小器官を浮き彫りにしてSEM観察を行なった。
    エナメル芽細胞遠心端部にはいずれの時期においても小胞および小管状構造の網目からなるtubulo-vesicle構造が存在し, それは主に遠位閉鎖堤に相当する部位でRERから直接するSERにより構成される網目であり, 遠心端細胞膜に近接して終わっていた。この構造は特に基質形成期のTomes突起内に著しく発達していた。
    この滑面の小管状構造物の多くはすでに報告されているACPase活性陽性かつZIO染色可染性の小胞, 小管構造と同一のものであり, 従って遠心端部におけるライソゾーム酸素の形成, 分泌に関与する可能性, 分泌に伴う膜のrecycling機構との関連性, ならび一部は脂質を介する細胞内カルシウム調節機構に関与している可能性などが示唆された。また形態的特徴から遠心端部における小管状構造はGolgi-GERI系とは独立したライソゾーム合成系である可能性も示唆された。
  • II. 口腔常在細菌が保有する酸化還元酵素について
    菊池 裕子
    1987 年 29 巻 3 号 p. 363-370
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    前報では, 酸素に対する増殖性より, 口腔常在細菌を4群に区分できること, および各々の客観的判定法について述べた。今回は, 各群に属する細菌28株を好気振盪培養, および静置培養し, 各細菌より得られた酸化還元酵素の培地当りの生成量およびタンパク質当りの活性 (Sp. act) について比較した。
    一般的にobligate aerobesではカタラーゼ活性は強いが, 全NADH酸化活性は弱く, スーパーオキサイド・ディスムターゼ (SOD) 活性は比較的中等度に持っていた。facultative anaerobesでは, カタラーゼ活性は全NADH酸化活性と共に中等度であり, SOD活性は強かった。aerotolerant anaerobesでは, カタラーゼは生成しないが, NADH酸化活性は最も強かった。SOD活性は中等度であった。obligate anaerobesのうち, カタラーゼを持つ株は, 静置培養でよくカタラーゼを生成した。また, V. alcalescensでは, 振盪培養の時SODを多量に生成した。
    また, これらの細菌12株についてディスク電気泳動を行い, SOD活性染色をした。Str. mutans Pk1, およびV. alcalescens ATCC17748株では, 2種類のアイソザイムが認められた。これらの結果から, aerotolerant anaerobesが好気的な条件でも増殖できる理由として, カタラーゼの代りにペルオキシダーゼやNADHペルオキシダーゼを多量に生成し, これによって蓄積した過酸化物を分解していることが考えられた。
  • Masashi Sakuma, Miyoko Yamamoto, Takahiko Ogata
    1987 年 29 巻 3 号 p. 371-377
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    屈曲隆線 (deflecting wrinkle) は下顎大臼歯の近心舌側咬頭の中心隆線が強く発達し, これが遠心方向に屈曲して歯冠中央部に至る形質である。最初Weidenreichにより定義され, その後Haniharaらによって, 詳細な分類と記載が行われた。本稿では, 中東アフリカに居住するマラウイ人から得た硬石膏模型 (男性65例, 女性67例) を用いて, その下顎大臼歯に現れた屈曲隆線をHaniharaらの規準 (1964) に従って観察した。その結果いずれの大臼歯においても, その出現頻度に性差はなかった。第1大臼歯における出現頻度は28.6%で, アイヌを除くモンゴロイド諸集団よりも低率であり, 屈曲隆線を“Mongoloid dental complex”の一要素に挙げているHanihara説の妥当性を示していた。しかし, マラウイ人の第2大臼歯における出現頻度 (6.1%) は, 明らかに日本人 (0%) よりも高い値を示すことや, 第1大臼歯においても, マラウイ人の頻度がモンゴロイド集団の示す変異域の下位に入ることなどを考え合わせると, 屈曲隆線が人種差を正しく表現しうる形質であるか否かについては, さらにモンゴロイド, ネグロイド両集団間の詳しい比較検討が必要と考えられる。
  • Marie Yamada, Akihiko Hirayama, Kiyoshi Miake
    1987 年 29 巻 3 号 p. 378-385
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    歯根膜の主たる細胞である線維芽細胞の基本的性質を解明する目的でALPaseとCa-ATPaseの酵素活性を中心に検索を行った。
    材料の牛歯根膜は咬合歯ならびに未咬合歯に付着したものの二種類とした。光顕的には無固定凍結切片を用いアゾ色素法により, 電顕用には固定後, クエン酸鉛法により酵素活性の局在を検出した。
    強いALPase活性が未咬合歯, 咬合歯共に観察された。反応産物はセメント質から歯槽骨に至る歯根膜全体にわたり, 細胞成分のみならず, 細胞外基質にも観察された。電顕的にも細胞の形質膜, 更に細胞間基質中にも多量に存在することが確認された。Ca-ATPase活性の微細構造的局在は線維芽細胞の形質膜であり, 細胞外基質には認められなかった。
    以上の所見より, 歯根膜の線維芽細胞は歯肉, 皮膚等に存在するものとは異なり, 骨芽細胞に類似した細胞化学的性質を有することが推察された。
  • Yasunori Takeda, Akira Fujimura, Yoh-ichiro Nozaka
    1987 年 29 巻 3 号 p. 386-389
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
  • Yuzo Ogawa, Yutaka Adachi, Toshio Yagi
    1987 年 29 巻 3 号 p. 390-393
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
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