歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
ネコのオトガイ下動脈について
疋田 芳寛諏訪 文彦
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1989 年 31 巻 5 号 p. 577-591

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抄録
ネコのオトガイ下動脈について成ネコ50頭を用い, アクリル樹脂注入法によってその起始・分枝, 分布状況を詳細に観察し, 比較解剖学的考察を行なった。オトガイ下動脈は顔面動脈から顎舌骨筋の後外側縁で, 顔面動脈本幹の続きのように派出していた。しかし, 1例ではオトガイ下動脈は顔面動脈起始位置で, 直接外頸動脈から派出していた。
オトガイ下動脈は起始後, 顎舌骨筋神経とともに顎二腹筋停止部と顎舌骨筋起始部の間を前下内側方へ走って顎舌骨筋の前外側端に達し, そこで舌下動脈を派出していた。さらに本動脈は下顎骨下縁起始のオトガイ舌筋下面を前下内側方へ向い, 下顎間軟骨結合の後下端に達し, 反対側のオトガイ下動脈と正中で吻合して正中枝となっていた。オトガイ下動脈の分枝には前咬筋枝, 顎二腹筋枝, 顎舌骨筋枝, 皮枝, 舌下動脈, オトガイ舌筋枝, 正中枝が認められた。ネコのオトガイ下動脈と舌下動脈の起始様相, 走行, 分枝, 分布域はイヌのものと類似していた。しかし, 両動脈の末梢についてはネコとイヌで相違が認められた。すなわちネコでは下顎前歯部舌側歯肉にはオトガイ下動脈の正中枝が, イヌではおもに舌下動脈が分布していた。またネコでは両側のオトガイ下動脈間の吻合が多く認められたが, イヌではこの吻合は認められず, 同側のオトガイ下動脈と舌下動脈間の吻合が多かった。
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