抄録
線マイクロアナライザーを用いて偶蹄目13種 (検索総数16) から得られた機能切歯 (永久歯, 乳歯) の元素分析を行った。永久歯, 乳歯ともにエナメル質のCaの量はいずれの部位においても均一であった。それに対して, 象牙質では, 永久歯のCaの量は表層から内層に向かい減少した。永久歯と比較して乳歯のMgの量 (約1-2%) は表層から内層に向かい増加した。Feがエナメル質に見られたが, その量は種間で異なっていた。さらに, Fの分布は永久歯と乳歯で異なっていた。
Ca, Pなどの元素やMg, F, Feなどの微量元素の分析結果は偶蹄目の永久歯と乳歯の相違を示す重要な要素の一つとして微量元素の分布量を考えることができることを示唆した。また, これら微量元素の分布量は偶蹄目の永久歯と乳歯における石灰化の機構と関係しているのかもしれない。