1998 年 40 巻 2 号 p. 85-95
アルカリ液による消化法を用いて, 走査型電子顕微鏡 (SEM) でウサギの舌中隔部の立体観察を行った. 細胞を消化した舌中隔の矢状断面において, 横舌筋の起始部は直径8~18μmのすりばち状陥凹として観察された. また横舌筋の指状微突起が入っていた直径0.3~1.2μmの陥凹が, 緻密な膠原線維束の中に観察された. 舌中隔の膠原線維網は2種に分けられた. 1つは横舌筋線維端から伸びる線維で, 舌中隔を横断して左右の横舌筋線維を結びつけていた. もう1つは舌中隔の中を, 舌の背腹方向に走る膠原線維網で, この線維の一部は, 垂直舌筋の結合組織鞘から伸びていた. この二方向に走る膠原線維網は, 横舌筋起始部の支持体としての役割を持つと考えられた. また膠原線維を消化した試料の観察から, 一部の垂直舌筋線維は舌中隔に接していた. これは舌中隔の背腹方向の緊張度の調節に役立っていると推察された.