2000 年 42 巻 6 号 p. 573-579
歯周組織再生誘導法であるguided bone regeneration (GBR) を用いた実験で, 骨が形成されなかった症例の微小循環と骨の関係を血管鋳型法にて観察した。
実験はイヌ両側下顎前臼歯を抜歯し, 非吸収性Polytetrafluoroethylene (PTFE) 膜で覆い, 樹脂血管注入を行った。術後30日, 骨膜からの新生血管がPTFE膜と骨壁の空隙から抜歯窩中に侵入すると再生骨の増生はみられなかった。術後60日, PTFE膜と再生骨の間隙は密な肉芽組織様血管網に満たされ, 骨の増生は認められなかった。
以上より, PTFE膜と骨面との密着が不完全などの原因により, 骨膜の血管が抜歯窩内に侵入すると骨増生が得られないことがわかった。GBRを成功に導くためにはPTFE膜により抜歯窩を確実にシールし, 抜歯窩内部の歯槽骨血管の新生を促進することが必要であると考えられた。