日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌
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ボーキングのある複数窓口待ち行列問題の拡散近似法
ビスワス シャマルカンティ須永 照雄
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1980 年 23 巻 4 号 p. 368-386

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抄録

ここではホーキングのある複数窓口待ち行列問題E_e/E_k/s(∞)へ拡散近似法の適用を試みている。到着時間々隔やサービス時間の分布はアーランとしているが,拡散近似法はこれら分布の平均と分散のみに関係するので,この方法はもっと一般の分布の場合への適用の可能性をもっている。ホーキングとは,待ち行列のある窓口に到着した客が,待つことを我慢できず立去る現象である。ホーキングの確率は行列の長さyの関数1-P(y)となるが,この現象は各各個人の主観に関係することなので,行列に加わる確率P(y)に対し種々の関数形が考えられる。こゝではP(y)=e^-<γy>(γは正のパラメータ)とした。待ち行列の存在しないとき,連続化されたシステム内客数xに関する拡散方程式はホーキングのないときの複数窓口待ち行列問題の場合と全く同じ手法で導かれる。待ち行列の存在するとき(y=x-s>0),xの増加率の平均はF(x)=λP(y)一μsとなり,その分散はD(x)=λP^2(y)/l+λP(y){1一P(y)}+μs/κと計算されるので,これより拡散方程式が導かれる。行列のないとき(x<s)に対する解f_1(x)と行列のあるとき(x&ge;s)に対する解f_2(x)をx=sで連続に接続し,(0,∞)で税分値を1にすることより確率密度関数f(x)が確定する。システム内にn人の客のいる確率はP(n)=∫^<n+。5>_<n-。5>f(x)dx(n&ge;1)と計算し,システム内客数の平均はL_1=Σ^^∞___<n=1>nP(n)となる。上述のP(n)の計算はn=0に対し適用できない。これは連続化された客数xは負にならないという考えより,拡散方程式の反射境界をx=0においたためである。しかしP(0)=∫^<。5>_<-。5>(x)dxの如き対応も自然な考え方と云える。そこで第二の案として反射境界をx=-0。5におき,(一0。5,∞)でf(x)の積分値を1とした。今度はP(n)=∫^<n+。5>_<n-。5>f(x)dx(n&ge;0)と計算でき,これを用いてL_2=Σ^^∞___<n=1>nP(n)を得る。提案された近似式L_2はその誤差評価よりみて,ホーキングのあるE_e/E_k/s(∞)(s&ge;2)システムに対し実用的見地より有効なものと推定される。最後に若干のL_2の図表を付加し実用に供した。

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© 1980 日本オペレーションズ・リサーチ学会
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