抄録
この論文は、ある化学プラントにおける製品の収量を最大化する問題を混合整数計画問題として定式化し、それを具体的に解く方法について述べたものである。この問題には、プラント各部の流量やタンクの容量制約などの物理的条件以外に、プラントの運転水準や運転方式に関する離散的(もしくは組合せ的)条件が付随しており、標準的な定式化を行うと、約150個の整数変数、150個の連続変数、および200本の線形制約式を含む中型の混合整数計画問題となる。しかし、現在の技術ではこれをそのままの形で、現場が要求する計算時間(1MIPSの計算機で1分以内)で解くことは不可能である。そこでわれわれは、整数計画法や組合せ最適化における常套手段である制約条件の緩和など多段階の近似手法を導入し、もとの問題の近似最適解を求める方法を考案した。これらの近似手法の中で最もオリジナルな部分は、問題を難しくしている運転水準の変更回数に関する制約を適切に処理した点である。このアルゴリズムは、すべての実用規模のテスト問題に対して、真の最適解からのずれが(目的関数値で測って)1%以下という、きわめて精度の高い近似最適解を生成した。これによって、従来の経験にもとづく運転方法に比べて平均で10%以上の収量増が達成されただけでなく、運転水準変更の回数も半分以下に減らすことができた。またこのアルゴリズムは現場の要求どおり、1MIPSの計算機で1分以内で良い近似解を与えるため、実時間での最適化への道が開かれることとなった。