2012 年 41 巻 p. 113-118
【目的】強度近視性斜視は中年以降に発症する後天性で進行性の斜視と考えられている。今回、10歳で発症した強度近視性斜視1例を経験したのでその発症機序を検討した。
【症例】10歳(小学5年)時、左眼が急に内斜し複視をきたしたので滋賀医大を受診し、20⊿の内斜位と-4.50Dの近視を指摘された。高校入学前、頭痛・複視が強いため尾崎眼科を受診し経過をみていた。症状はいったん寛解したが大学受験前に再発、悪化したため斜視手術を勧められるが、転居のため当院へ紹介受診となった。平成23年5月の当院受診時、遠見近見ともに35⊿内斜視、屈折は右眼S-9.00D、左眼S-9.25D Cyl-0.50D 65°、眼軸長は右眼27.61mm、左眼27.79mm、Hess赤緑試験で両眼外転不全、MRI検査で脱臼角は右眼135°、左眼121°、両眼上直筋の鼻側偏位、両眼外直筋の下方偏位と外直筋-上直筋バンドの菲薄化、偏位、断裂を認めた。
【結論】近視と内斜視の進行の経過、眼軸長の伸長、眼球の亜脱臼、MRI所見から最も早期に発症した強度近視性斜視と診断し、外直筋-上直筋バンドの脆弱性が主要因であったと考えた。