日本視能訓練士協会誌
Online ISSN : 1883-9215
Print ISSN : 0387-5172
ISSN-L : 0387-5172
特別講演
神経眼科の切り口からみた弱視斜視臨床
内海 隆
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 42 巻 p. 1-15

詳細
抄録

 神経眼科の立場からみると、弱視・斜視領域の臨床の中で疑問を感じることがいくつかある。
 アトロピン使用法では、PEDIGの唱える片眼弱視治療における1%液の週末2回点眼では、点眼をしない月曜日から金曜日にかけて徐々に調節麻痺が弱まるという欠点がある。0.25%や0.5%液が調節麻痺剤として用いられているが、その調節麻痺力の客観的証拠はない。0.01%点眼に近視進行抑制予防作用があるというが、その機序に論拠を欠く。
 輻湊と調節では、急速相から緩徐相に置き換わると説明され、これが障害されて初期の急速相で完遂しようとするために調節性内斜視あるいは斜位近視が発症すると説明されているが、速い輻湊を持続させた姿として調節内斜視の機序を説明するには無理がある。神経生理学的・神経解剖学的研究報告によれば、速い輻湊の経路とゆっくりした遅い輻湊の経路は解明されてはいるが、その発動の“入れ替わり”の中枢は未解明である。輻湊・調節・縮瞳は近見3徴と呼ばれ、3者の筋電図が同時に放電することから近見反射と理解されるべきである。調節系から輻湊系へ(調節性輻湊)、あるいは輻湊系から調節系へ(輻湊性調節)という中位・下位レベルの横の関連性を証明する神経生理学的・神経解剖学的事実はない。相対輻湊と相対調節についても、完全に実験室的条件下の現象であり、実際の臨床的事実を説明しようと試みても限度がある。

著者関連情報
© 2013 公益社団法人 日本視能訓練士協会
次の記事
feedback
Top