日本視能訓練士協会誌
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一般講演
片眼性の調節痙攣が疑われた心因性視覚障害の一例
常盤 純子石川 奈津美山本 莉奈竹下 孝之中澤 徹
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2014 年 43 巻 p. 257-262

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抄録

 調節痙攣は毛様体筋の不随意的な持続的収縮により過剰な近視を呈する病態であり、その多くは心因性である。調節は通常両眼対称性に生じる反応であることから、心因性の調節痙攣も一般的には両眼性で生じ、片眼性での報告は希である。今回我々は、片眼性の調節痙攣と心因性視覚障害が合併した特異な症例を経験したので報告する。
 症例は14歳女性。左眼の視力低下を自覚し近医を受診、他覚的にあきらかな異常が認められなかったため精査目的で当院を紹介され受診した。左眼は通常の視力検査では視力が出ず、トリック法を用いると良好な矯正視力が得られた。また視野検査では求心性視野狭窄を認めた。細隙灯検査や眼底検査などの他覚的検査で異常は見られなかったことなどから、心因性視覚障害と診断された。また、右眼に比べ左眼のみ過度の近視化が認められたが、調節麻痺下では屈折値に左右差はなく、眼軸長も左右差がなかったことから、左眼の片眼性調節痙攣が疑われた。
 その後、経過観察中に矯正視力の変動を繰り返し、トリック法を用いても良好な視力が得られなくなり、自覚的視力は無光覚まで低下するようになった。それと同時期に輻輳痙攣も見られるようになった。
 調節痙攣に対する治療として、累進屈折力レンズや調節麻痺剤の点眼を使用したが、十分な改善は得られず、輻輳痙攣が若干軽減した程度であった。片眼性の調節痙攣と心因性視覚障害という特異な所見を呈し、各種治療にも抵抗性であったが、その後の生活環境の変化で心理的ストレスが軽減された様子があり、発症1年後には自覚症状は改善し、調節痙攣などの所見は自然消失した。

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© 2014 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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