日本視能訓練士協会誌
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シンポジウムⅡ
複視を自覚して来院されたら
鈴木 利根
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2016 年 45 巻 p. 1-4

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抄録

 複視を訴える患者を診た場合、まず単眼性複視とその原因疾患や、共同性斜視でも両眼性複視を訴える場合があることに注意する。これらが除外されれば眼球運動障害の性状を調べその原因診断に入る。

 まずは問診で年齢が参考になり、小児では先天性や腫瘍を念頭におき、成人で特に高齢者では虚血性を含めた血管障害をまず疑う。発症様式では急性では血管障害、数か月で進行する場合は脳腫瘍、症状が変動する場合は重症筋無力症を考える。次に眼位や眼球運動の検査により、ある程度の病巣部位や原因疾患を絞り込んでから画像検査や血液検査などを行う。

 診断には解剖学的な知識として各外眼筋とその作用・支配神経と、脳幹の水平および垂直中枢神経機構の理解が必要である。複視を主訴とする眼筋麻痺をきたす疾患として頻度が高いのは動眼・滑車および外転の各神経麻痺で、さらに甲状腺眼症や重症筋無力症も多い。中枢性麻痺である水平注視麻痺やMLF症候群、垂直注視麻痺は特徴的な症状を示し、これらがみられれば病巣は脳幹部に限局されてくる。

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