日本視能訓練士協会誌
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シンポジウムⅡ
外転神経麻痺の視能訓練
岡 真由美河原 正明
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2016 年 45 巻 p. 5-11

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抄録

 外転神経麻痺例に対する視能訓練効果から、日常生活評価を重視した視能訓練法について報告した。

 対象は視能訓練を実施した後天外転神経麻痺16例で、年齢は32~87歳であった。原因疾患の内訳は、末梢血管障害、自己免疫疾患、脳外科術後などであった。視能訓練は、衝動性眼球運動訓練、fusion lock training、プリズム装用を行った。視能訓練の他覚的評価は融像を主体とした治癒基準を用い、治癒度Ⅰが融像野30°以上、治癒度Ⅱが融像野30°未満、治癒度Ⅲが麻痺筋の作用方向で融像障害が残存するものとした。

 治癒度別の症例数は、治癒度Ⅰ(以下、治癒度Ⅰ群)13例、治癒度Ⅱ・Ⅲ群3例であった。治癒度Ⅰ群の治療開始時期は発症より6か月未満であった。治癒度Ⅰ群の視能訓練開始から治癒までの期間は末梢血管性で最も短期であり、小脳橋角部髄膜腫で長期を要した。治癒度Ⅰ群は狭い融像野と部分融像の症例が多く、衝動性眼球運動訓練とfusion lock trainingが有用であった。乗用車運転時の安全確認等で不自由が残存した症例に対しては、遠見でのfusion lock trainingにより日常生活での満足度が改善した。

 視能訓練効果の獲得には、発症より6か月未満に開始し融像状態に応じて実施すること、日常生活評価を指標とすることが重要であった。

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© 2016 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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