日本視能訓練士協会誌
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一般講演
高齢者高度角膜乱視における前面・後面乱視の検討
馬込 和功長井 博文新飼 一仁副島 由美松井 孝明
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2017 年 46 巻 p. 209-216

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抄録

【目的】高齢者高度角膜乱視眼の前面と後面乱視の分布や関係性を検討する。

【対象および方法】対象は角膜乱視が2.0D以上あり角膜疾患や眼手術歴を有さない60歳以上の304名426眼(60代142眼、70代149眼、80代以上135眼)。角膜形状の測定には前眼部OCTを用い、角膜前面はKeratometric、角膜後面はPosteriorの値を使用し、分布や関係性について検討した。

【結果】角膜乱視軸分類において前面乱視は直乱視173眼・斜乱視2眼・倒乱視251眼、後面は直乱視98眼・斜乱視65眼・倒乱視231眼、乱視なし32眼であった。年代別における前面乱視は、60代では直乱視78.2%、倒乱視21.1%で、80歳以上になると直乱視9.6%、倒乱視89.6%となり加齢による倒乱視化がみられた。後面乱視は、60代では直乱視6.3%、倒乱視84.5%で、80歳以上になると直乱視38.5%、倒乱視26.7%となり直乱視化がみられた。また、角膜前面直乱視群は全症例後面倒乱視で前面・後面の乱視量に相関を認め(r=0.71、p<0.01、Spearman)、角膜前面倒乱視群では、後面倒乱視23.3%で前面・後面の乱視量に相関を認めず(r=0.01、p>0.05、Spearman)、前面乱視軸の種類により後面乱視の分布や前面乱視との関係性に違いを認めた。 

【結論】高齢者高度角膜乱視眼の角膜後面乱視軸は、角膜前面乱視軸とは逆方向の軸分布傾向がみられた。特に角膜前面倒乱視群の場合は、後面倒乱視以外が約80%を占め後面乱視軸のバラつきがあるため、トーリック眼内レンズのモデル選択には注意が必要と考える。

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© 2017 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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