日本視能訓練士協会誌
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一般講演
ロービジョンによる歩行困難のシミュレーション体験
岸 大介正条 智広岸 哲志塚原 嘉之佑生方 北斗多々良 俊哉前田 史篤田淵 仁志
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2020 年 49 巻 p. 57-63

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抄録

【目的】視能訓練士学生に対してロービジョン者の歩行困難の理解を促す手段としてシミュレーション体験を実施し、その有効性を検討した。

【対象および方法】対象は47名の視能訓練士学生とした。学生にはロービジョン体験キットを装用させ、視野狭窄(求心性視野狭窄で中心5度)と視力低下(小数視力0.06程度)をシミュレーションした。歩行課題は屋外と屋内の単独歩行、そしてガイドヘルプを利用した屋外歩行とした。実施後には歩行中に感じた困難の程度を回答させた。

【結果】単独の屋外歩行の視野狭窄の困難度(平均値±標準偏差 [中央値])は4.11±0.76 [4] で、視力低下の2.47±0.91 [2]より高値であった(p<0.01)。屋内歩行の視野狭窄は3.70±0.88 [4] で、視力低下の2.00±0.93 [2] より困難であった(p<0.01)。ガイドヘルプを利用した屋外歩行では視野狭窄で3.47±0.97 [4]、視力低下で2.11±1.01 [2] となり、単独歩行と比較して困難度が有意に軽減した(p<0.01)。

【考按】視野狭窄による歩行困難度は視力低下よりも高かったが、これは実際のロービジョン者を対象とした他の研究と同様であった。学生は歩行困難を体験するとともに、ガイドヘルプを利用することで単独歩行よりも困難度が軽減することを理解できた。シミュレーション体験は学生がロービジョンによる歩行困難を理解するのに有用であった。

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© 2020 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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