日本視能訓練士協会誌
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一般講演
対照群を伴わない低濃度アトロピン治療1年間の成績
山田 裕華生野 恭司
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2020 年 49 巻 p. 161-165

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抄録

【目的】低濃度アトロピン点眼液は近視進行コントロール治療の中でも比較的心理的障壁が少なく導入しやすい。そのため日本でも多くの施設で導入されていると考えられる。今回、本研究の治療の1年間の成績を後ろ向きに調査し、近視進行の程度および諸因子の関連を検討した。

【方法】対象は屈折異常以外に眼疾患のない健常学童50例100眼(男児25名、女児25名 平均10.74±5.26歳)である。0.01%アトロピン硫酸塩点眼液を1年間にわたり両眼に1日1回眠前に点眼させた。点眼開始後3ヶ月ごとに来院し、非調節麻痺下での他覚的屈折値と裸眼および矯正視力、6ヶ月毎に眼圧値、眼軸長を測定した。

【結果】近視度数は1年で0.63±0.10 (平均±標準誤差、以下同じ)ジオプトリ(D)進行し(P<0.01)、眼軸長は0.39±0.03mm伸展(P<0.01)、眼圧は0.67±0.33mmHg下降した(P<0.05)。初診時の裸眼視力値が高いかもしくは近視度数が少ないほど、1年間で近視度数・眼軸長ともにより大きく進行もしくは伸展した(P<0.01)。

【結論】本療法下でも有意に近視は進行し、進行の危険因子は初診の治療開始時点での軽度近視である。既報には眼圧は有意差を認めないとあるが本研究では認めた。

【左上】初診時の裸眼視力と低濃度アトロピン点眼継続12ヶ月後に進行した近視度数の等価球面屈折値(SE)の関係性 縦軸に12ヶ月後の近視の進行度数のSE、横軸に初診時の裸眼logMARを示す。 初診時の裸眼視力と12ヶ月後のSEの2群間に有意な正の相関を認めた。 (P<0.01、R2=0.104、y=0.667x -1.162) 【右上】初診時と低濃度アトロピン点眼継続12ヶ月後の等価球面屈折値(SE)の比較 12ヶ月で近視は平均0.63D±0.10D進行した。(P<0.01、対応のあるt検定) 【左下】初診時と12ヶ月時の眼圧(IOP)の比較 眼圧は平均0.67±0.33mmHg下降した。(P<0.05、対応のあるt検定) 【右下】初診時と12ヶ月時の眼軸長(AL)の比較 眼軸は12ヶ月で平均0.39±0.03mm伸展した。(P<0.01、対応のあるt検定) Fullsize Image
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© 2020 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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