日本視能訓練士協会誌
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頭位の傾斜が縞視力に及ぼす影響
稲垣 尚恵
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2020 年 49 巻 p. 193-204

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抄録

【目的】頭位の傾斜が縞視力に与える影響について眼球反対回旋(OCR)を考慮し検討した。

【方法】対象は眼疾患や眼位眼球運動に異常がなく、乱視度数が0.75D未満、裸眼視力1.5以上の5名(平均年齢19.8±1.6歳)5眼。縞視力実験はコンピューター画面上にコントラスト90.6%の縞視標を呈示し、視標の傾斜検出の正答割合を求めた。測定条件は、空間周波数15、17、20、24、30、40、60 cpd、視標の傾斜は垂直0°、±45°、水平-90°、被験者の頭位の傾斜は垂直0°、±45°、水平-90°とした。OCRは、縞視力実験と同じ頭位条件で虹彩紋理を撮影し眼球の回旋角度を求めた。正答割合と回旋角度について分散分析を用いて検討した。

【結果】(1)空間周波数24cpd以下では頭位の傾斜は視力値に影響しなかった。(2)空間周波数30、40cpdでは頭位0°条件においてoblique effectが見られた。(3)頭位-90°条件では、正答割合が他の条件に比べ低かった。(4)頭位傾斜の10~20%のOCRが生じたがoblique effectに影響を与えることはなかった。

【結論】視力は、頭位0°での測定が望ましい。視標の呈示は、頭位±45°では頭位の傾斜方向に合わせる必要がある。頭位-90°では頭位の方向ではなく、垂直方向に合わせる必要があり、視力が低く測定されることを考慮しなければならない。

図2 縞視力測定実験の流れ矢印は実験の進行を示す。開始とともにランダムドットのマスク刺激が500ms間呈示され、続いて、0.1°の固視点が500ms間呈示された。その後、各周波数条件の縞視標が呈示され、被験者が見えた縞視標の方向をゲームパッドのボタンを押して回答すると1試行が終了した。視標の傾斜4条件×空間周波数7条件の計28試行が無作為に呈示された。 Fullsize Image
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