日本視能訓練士協会誌
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シンポジウム「弱視治療の実際と問題点」 弱視の治療法-文献的考察
根本 加代子
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1998 年 26 巻 p. 67-80

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抄録

弱視と弱視治療に関する先人の業績を回顧することは、私たちが臨床の場で出会う多くの問題や疑問に答える糸口が得られることである一方では、私たちが同じ知識基盤を共有し、同じ学術用語を用いて、討論をすることで、お互いがより深く理解し合えるのであるこのような同じ知的背景の中から、私たちがより良い治療法や新しい訓練法の創造、そして、従来からの訓練治療にたいする学術的批判をも可能とし、その改善に繋がるのである。今回まとめた内容について以下に記す。
弱視の病態に関する基礎的研究(弱視のニューロンの基礎)。
弱視治療に用いられる遮蔽法についての神経生理学的考察。
日本における弱視の頻度は約2.3%と推定される。
器質弱視の訓練は視力回復の可能性があることを前提とし、訓練終了の時期を明確にする。
遮蔽治療が困難な時、ペナリゼーションは有効である。
間歇遮蔽か終日かの選択は症例の症状に基づき決定される。
アトロピン遮蔽は重篤な健眼視力低下をもたらすことがある。
点眼中は瀕回の視力チェックを要する。
健常視力かそれに近い回復が得られる年齢的限界は15歳前後である。なんらかの回復が期待できる年齢の限界は不明である。
弱視治療訓練終了判定基準としては視力の向上した者は交代固視でき、さらに不同視弱視では中心窩抑制が取れ、両眼開放視力が等しくなった時をもってする。また、治癒効果が得られない判定は終日遮蔽にて連続3回の検診でも視力が不変の時をもってする。
健眼失明者の弱視眼の30%に0.3~1.0(3ライン以上)の改善が見られた症例とそのメカニズムの考察。
L-dopaあるいはciticolineで抑制暗点の縮小や視力の向上が見られるが、副作用の除去、効果の持続、作用機序の解明が不十分であり、これらの解析が進すめば、新しい治療法が生まれる可能性があること。

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