日本視能訓練士協会誌
Online ISSN : 1883-9215
Print ISSN : 0387-5172
ISSN-L : 0387-5172
強度近視の白内障患者における近方視と術後の満足度について
吉村 尚子池淵 純子筑田 昌一真野 富也
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 31 巻 p. 131-137

詳細
抄録
強度近視の白内障患者における近方視と術後の満足度について検討した。術前矯正視力が0.5未満で、近方視を考慮して手術を施行した20例を対象とした。術前屈折値は等価球面値にて-8.63Dから-32.50Dであった。術前・術後の矯正視力および最大視認力を測定し、また術前の近方視の状況と術後の満足度についても調査し検討した。
術前の矯正視力は0.02から0.4で、これに対し最大視認力は0.3から1.0(視距離5cmから27cm)であり、全例で最大視認力の値が矯正視力よりも良好であった。術前の近方視では85%の症例が仕事や趣味で近見を重視した生活を送っていた。術後の結果は、矯正視力が0.1から1.0で視力が低下した症例はなかった。最大視認力は0.25から1.0(視距離9cmから44cm)で1例のみが低下していた。術後屈折値は等価球面値にて-1.38Dから-11.25Dであった。満足度では1例のみが不満足であり、これは最大視認力が低下した症例であった。
手術の際には術前の近方視の状態を把握しておくことが重要で、最大視認力はこれをとらえる指標として有用であった。強度近視患者が満足を得るには“最大視認力を低下させない”という点を考慮し、術前の背景・患者の希望・予測される視力にもとづき、術後の屈折値を設定することが必要と考えられた。
著者関連情報
© 日本視能訓練士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top