日本視能訓練士協会誌
Online ISSN : 1883-9215
Print ISSN : 0387-5172
ISSN-L : 0387-5172
水晶体起因性と考えられる不正収差症例のPSF解析による網膜像シミュレーション
藤池 佳子山口 洋子松丸 麻紀勝田 智子村井 徳子逸見 睦子大沼 一彦大野 建治野田 徹
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 35 巻 p. 77-85

詳細
抄録

縦方向のみの単眼多重視を急性発症した42歳女性の1症例を経験した。角膜トポグラフィーでは角膜に不正収差、波面センサーでは角膜および全眼球に高次収差を認めたが、ハードコンタクトレンズ(以下HCL)装用により角膜の不正収差を矯正すると、むしろ多重視はより明瞭に自覚されることから、多重視の主要な原因は水晶体に起因する不正収差であると考えられた。HCL装用状態での波面収差解析では、多重視を説明する高次収差は検出されず、水晶体の波面収差は解析精度を超えた複雑な形態であることが示唆された。point spread function(以下PSF)アナライザーによるPSF解析から得られたランドルト環の網膜像シミュレーションには縦方向の多重視像が描出され、さらにHCLを装用した状態ではさらに多重像が明瞭となり、自覚所見に一致した結果が得られた。本症例では、水晶体組織における加齢変化の一過程において何らかの形体変化が生じ、不正な収差が発生したものと推測した。PSFアナライザーは、波面センサーの解析範囲を超える複雑な収差を有する眼においても患者の自覚所見を反映するシミュレーション網膜像が得られるため、臨床上の応用範囲が広く有用であると考えられた。

著者関連情報
© 日本視能訓練士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top