日本視能訓練士協会誌
Online ISSN : 1883-9215
Print ISSN : 0387-5172
ISSN-L : 0387-5172
35 巻
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  • 調 廣子
    2006 年 35 巻 p. 1-7
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    従来、乳幼児の視機能(視力、立体視)については多くの研究がなされている。今回はこれらの報告の中からOKN、VEP、Preferential looking法、Grating acuity card法などによる正常視力について簡単に解説するとともに、現在臨床で使用されているPreferential looking法、Grating acuity card法、dot card法の実際について述べる。加えて検査が困難であることが多い乳幼児の検査について、私見を交えてそのコツを付記する。
  • 大牟禮 和代
    2006 年 35 巻 p. 9-14
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 越後貫 滋子
    2006 年 35 巻 p. 15-18
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • Cindy Pritchard
    2006 年 35 巻 p. 19-28
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    For the treatment of intermittent exotropia, conventional thinking assigns sensory treatment to the orthoptist and motor treatment to the ophthalmologist. However, upon close examination of this line of thinking as discussed in this paper, one can see that the margins are blurred. It is the orthoptist that provides the measurements that are used by the surgeon to determine the surgical procedure and the amount of surgery. Clearly, the orthoptist is involved in the surgical decision-making process. We therefore have not only an opportunity but an obligation to our patients to expand our involvement by applying measurement strategies that provide the surgeon with the best information about the size of deviation and to do more research in this area. We also must expand our thinking to investigate features that might help predict response to standard surgery, enabling the surgeon to augment the procedure or the amount of surgery to improve surgical outcome when particular features are present pre-operatively. We cannot assume that it is random chance that the exact same surgical procedure for patients with the exact same measurements can result in a cure for some but to overcorrection or under-correction in others. Orthoptic research can help identify reasons for this variation in response to surgery.
    Orthoptists have been tremendously successful in devising methods for non-surgical management of intermittent exotropia that include techniques for breaking suppression and building fusional convergence. Our role should not be limited, however, to treatment of the sensory anomalies of intermittent exotropia, but rather should include application of our knowledge, skills and research abilities to surgical planning for treatment of the motor component of intermittent exotropia. By expanding the involvement of orthoptists, the orthoptist/ophthalmologist team will be better able to cure intermittent exotropia. In the meantime, however, as we strive toward improving cure rates, we can be encouraged by the knowledge that treatment “failure” does not necessarily equate with patient dissatisfaction. In a review of charts of 69 consecutive patients in my practice that had surgery for intermittent exotropia, some also treated with orthoptics, 39 were not cured and were considered treatment failures at their most recent visit with failure defined as intermittent or constant tropia of any size or a phoria greater than 8? at distance or near. In spite of being categorized as treatment failures, sixty-two percent of those 39 patients were happy with their outcome, unaware of any manifest deviation and asymptomatic. Therefore, obtaining a cure is not necessarily a requirement for patient satisfaction. As orthoptists we can have pride in our past clinical and research accomplishments that have brought us methods for eliminating symptoms associated with intermittent exotropia. We must, however, continue to move forward, continue to learn, continue to explore. We can improve surgical success, we can render more of our patients asymptomatic and we can cure intermittent exotropia.
  • ヘンシュ 貴雄
    2006 年 35 巻 p. 29
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 藤田 一郎
    2006 年 35 巻 p. 31-32
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    ヒトは、顔の正面に左右2つの眼を有しており、視野内の広範囲にわたって両眼視が可能である。両眼視野内の対象物は左右の眼の網膜に像を投影するが、2つの眼は異なる角度から世界を見ていることから、左右の網膜に投影される外界像はわずかに異なっている。このように、左右の網膜における神経細胞活動による外界世界の表現は少し異なっているが、2つの異なった視野が重なって感じられるのではなく、1つの3次元的な視野の知覚が生じる。左右眼における網膜像の水平方向の位置ずれを両眼視差と呼び、両眼視差に基いて奥行きを知覚する能力を両眼立体視と呼ぶ。両眼立体視は、脳が、左右一対の網膜2次元表現から外界世界に関する1つの3次元構造を再構成する過程と捉えることができる。
    両眼視差の検出は一次視覚野(V1)で算出され、そのメカニズムはよく理解されている(Ohzawa,1998)。しかし、V1細胞の視覚反応の性質は、さまざまな点で、両眼奥行き知覚の心理学的な性質と異なっており、V1細胞は両眼視差という物理量の検出という重要な初期過程を担うものの、その出力がそのまま奥行き知覚の形成に貢献しているのではない。視覚経路のV1以降の段階でさらなる情報処理を経た神経活動が、両眼奥行き知覚に使われるのである。
    霊長類大脳皮質視覚野のうち背側視覚経路(V1野から頭頂葉へいたる経路)に属するMT野の細胞がある種の奥行き知覚課題に機能的に関わっている良い証拠がある。MT野細胞は、どのような両眼視差に反応するかという性質にもとづいてMT野内で配列されており、その活動の試行間変動とサルの両眼奥行き判断には相関がある。しかも、MT野の局所刺激により、サルの奥行き判断に影響を与えることができる。たとえば、交差視差(ものが注視面より手前にあるときに生じる視差)に反応する細胞が集まっているところを電気刺激し、細胞の活動を賦活すると、サルはそのときに提示された視覚図形が手前に見えるという行動レポートを行う。ところが、MT野細胞の性質もV1細胞と同様にいくつかの点で奥行き知覚を説明することができない。たとえば、人の両眼奥行き判断は、複数の面や物体の間の相対視差に依存しているにも関わらず、MT野の細胞は、絶対視差を情報として伝えている。
    一方、腹側視覚経路(V1野から下側頭葉皮質TE野へいたる経路)のV4野、TE野は従来、形、色、模様など、視覚対象の2次元的特徴を処理する領野と考えられてきたが、近年、これらの領野においても両眼視差情報が処理されていることが判明した(Uka et al., 2000; Janssen et al., 2000; Hinkle and Connor, 2001; Watanabe et al., 2002; Fujita, 2002)。
    V4野やIT野の細胞は、絶対視差ではなく相対視差を情報として伝え(Umeda et al., 2004)、両眼対応点問題を解決しており(Tanabe et al., 2004)、また、細かい両眼奥行き判断と相関した活動を示す(Uka et al., 2005)。これらの結果は、側頭葉視覚経路の後半部の細胞が、奥行き知覚、とくに相対視差の検出を必要とする細かい奥行き弁別に関与していることを強く示唆している(藤田2006)。
  • 大沼 一彦, 小林 克彦, 野田 徹
    2006 年 35 巻 p. 33-46
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    波面センサは収差の小さい屈折異常眼に関しては、眼球光学系全体の光学的特性に関する収差を数値化できるので、屈折矯正などの分野では特に有用な装置である。一方、大きな収差や混濁を有する眼、すなわち円錐角膜眼、白内障眼などの生体眼の光学特性を知ることは臨床上の重要課題である。また、複雑な光学デザインを持つマルチフォーカルコンタクトレンズ装用眼、マルチフォーカル眼内レンズ挿入眼などに関しても、その見え方に関する評価情報が得られれば、それらはレンズデザイン開発からも重要な情報となる。そのような測定に適した装置としてPSFアナライザを開発し、その応用に於いての有効性を確認したのでここに紹介する。
  • 網膜内因性信号計測法
    角田 和繁
    2006 年 35 巻 p. 47-51
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    視覚的機能を他覚的に評価することは、眼疾患の早期発見および治療効果の判定のために基本的かつ重要な課題である。そのために眼科における画像診断技術(イメージング)は近年めざましい進歩をとげてきたが、それらは主に解剖学的構造の把握を目的としており、視細胞をはじめとする網膜の神経活動を捉えることはできない。我々が開発した網膜内因性信号計測法は、非侵襲的な網膜神経機能のイメージング法であり、神経活動にともなって神経組織の微細構造や血流が変化する現象を利用したものである。この技術により、従来は不可能であった錐体視細胞、杆体視細胞の機能的マッピングを、高い解像度で行うことができるようになった。動物実験における信号の閾値は網膜電図(ERG)のb波とほぼ同等であることが示されており、現在ヒトでの計測が可能なように開発を行っている。このイメージング法が実現すれば、様々な網膜疾患において精度の高い他覚的機能評価が可能になると期待されている。
  • 仲泊 聡, 古田 歩
    2006 年 35 巻 p. 53-58
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    機能的磁気共鳴画像法(以下fMRI)は、MRIを用いた非侵襲的脳機能測定法である。この手法を用いて視野内の位置と大脳視覚野の反応点との対応関係から、ヒト視覚野の細分類が実現されている。この手法を洗練してきたWandell研究室にて、筆者らはその技術を習得し、これまでその視覚刺激を改良し、解析法を工夫することで、この技術の臨床応用を試みた。筆者らは、fMRIによって得られた機能画像から被験者の視野を再構築することに成功した。筆者らの用いている視覚刺激は、視野の極座標の偏心度(r)と極角(θ)の情報の両者を同時に含み、これらを異なる周期で提示することで、得られたデータからフーリエ解析によりそれぞれを分離同定することができる。これを後頭葉全画素について解析することにより、任意の視野位置に対応してどれだけの画素が視覚刺激に応答しているかというヒストグラムを作成できる。そして、この分布を2次元平面上に表示するとそれはすなわち視野表を意味することになる。筆者らは、同時刺激の利点を測定時間を短縮できる点と任意の画素にrとθ情報の両方を持たすことができる点と考え、この刺激法が患者の視野測定に最適であると判断した。そして、正常被験者にこれを適用し実験を行なったところ、視野表示は可能であり、臨床応用が可能であるものと考えられた。
  • 松本 長太
    2006 年 35 巻 p. 59-60
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 魚里 博
    2006 年 35 巻 p. 61-66
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    視力や屈折などの視機能の測定は、眼科検査の最初の必須項目であるが、その評価手順は簡単ではなく生理学的および心理学的な多くの要因の相互作用も要求される。瞳孔径はこのような屈折や視力などの視機能検査に関係する重要な因子であるが、その効果は複雑である。
    我々は瞳孔径や収差が両眼視下や単眼視下の視機能検査に及ぼす影響を検討した。視力やコントラスト感度測定中における瞳孔径を経時的に連続測定した。収差測定はOPD-Scanにより行い、得られたゼルニケ係数をSchweigerling法により両眼視下あるいは単眼視下の瞳孔径に合わせた径で再計算した。両眼視下のコントラスト感度(logCS)は単眼視下のものより有意に高い感度を得た。両眼視下の視力は単眼視下より有意に良好であった。平均瞳孔径は両眼視下で単眼視下よりも有意に小さかった。瞳孔径が減少するに従い、光学収差は有意に増加した。このことは、単眼から両眼への瞳孔径の減少(縮瞳)は、眼球光学系の光学収差を減少させ、ひいては自覚的な視機能を改善するのに貢献していると考えられた。
    単眼視から両眼視下あるいはその逆に伴う瞳孔径の変化は、日常臨床における各種視機能検査へ重要な影響を与えることを常に考慮すべきである。
  • 長谷部 聡
    2006 年 35 巻 p. 67
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 倉岡 佐知子, 須藤 史子, 島村 恵美子, 佐藤 千秋, 高橋 みどり
    2006 年 35 巻 p. 69-76
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    【目的】解析中心ずれが高次収差量に与える影響を検討した。【対象と方法】対象は有水晶体群23例23眼、IOL群23例23眼、収差測定にはHartmann-Shack波面センサーを内蔵するKR-9000PW(TOPCON社製)を用いた。瞳孔中心と角膜反射中心で解析し、瞳孔径4mmでの角膜と眼球全体の高次収差(コマ様・球面様・全高次収差)を求めた。(1)解析中心ずれ(瞳孔中心と角膜反射中心の距離)、(2)瞳孔中心解析と角膜反射中心解析における収差量、(3)収差変化量(瞳孔中心と角膜反射中心の差の絶対値)、(4)解析中心ずれと収差変化量の相関について検討した。【結果】(1)解析中心ずれは2群間に有意差はなかった。(2)角膜高次収差では両群ともコマ様・全高次収差に有意差が認められ、眼球全体の高次収差ではIOL群ですべてに有意差が認められた。(3)収差変化量において角膜高次収差は2群間に有意差はなかったが、眼球全体の高次収差ではコマ様・全高次収差において有水晶体群に比べIOL群で有意に大きかった。(4)角膜高次収差では、両群とも解析中心ずれが増すにつれ収差変化量も増える傾向があった。眼球全体の高次収差では、有水晶体群で解析中心ずれと相関は認めず、IOL群で解析中心ずれと正の相関を認めた。【結論】IOL眼は有水晶体眼に比べ解析中心ずれの高次収差への影響が大きい。散瞳不足や不均等な散瞳により瞳孔中心が変わり解析中心のずれが生じる可能性があるため、瞳孔が均等に開いた状態で測定すべきである。
  • 藤池 佳子, 山口 洋子, 松丸 麻紀, 勝田 智子, 村井 徳子, 逸見 睦子, 大沼 一彦, 大野 建治, 野田 徹
    2006 年 35 巻 p. 77-85
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    縦方向のみの単眼多重視を急性発症した42歳女性の1症例を経験した。角膜トポグラフィーでは角膜に不正収差、波面センサーでは角膜および全眼球に高次収差を認めたが、ハードコンタクトレンズ(以下HCL)装用により角膜の不正収差を矯正すると、むしろ多重視はより明瞭に自覚されることから、多重視の主要な原因は水晶体に起因する不正収差であると考えられた。HCL装用状態での波面収差解析では、多重視を説明する高次収差は検出されず、水晶体の波面収差は解析精度を超えた複雑な形態であることが示唆された。point spread function(以下PSF)アナライザーによるPSF解析から得られたランドルト環の網膜像シミュレーションには縦方向の多重視像が描出され、さらにHCLを装用した状態ではさらに多重像が明瞭となり、自覚所見に一致した結果が得られた。本症例では、水晶体組織における加齢変化の一過程において何らかの形体変化が生じ、不正な収差が発生したものと推測した。PSFアナライザーは、波面センサーの解析範囲を超える複雑な収差を有する眼においても患者の自覚所見を反映するシミュレーション網膜像が得られるため、臨床上の応用範囲が広く有用であると考えられた。
  • 牧野 伸二, 木野内 理恵子, 保沢 こずえ, 近藤 玲子, 川崎 知子, 坂庭 敦子, 杉山 華江, 平林 里恵, 山本 裕子
    2006 年 35 巻 p. 87-92
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    プリズム眼鏡装用を行なった乳児内斜視97例を対象に斜視角変化に及ぼす要因を検討した。斜視角変化は78Δ減少から20Δ増加(平均22.8±20.2Δの減少)が認められ、20Δ以上の減少が47例(48.5%)、10Δ~19Δの減少が23例(23.7%)、9Δ以内の増減が26例(26.8%)、10Δ以上の増加は1例(1.0%)であった。斜視角の減少は、初診時の斜視角が40Δ以上の例で26.3±20.6Δ、40Δ未満の例で11.5±14.0Δと両群間に有意差があった(p<0.001)。さらに、初診時斜視角と斜視角減少の間には有意な正の相関があった(r=0.363,p<0.001)。屈折値、交代性上斜位の有無、プリズム装用開始月齢との関連はなかった。
  • 稲垣 理佐子, 浅野 麻衣, 正木 勢津子, 彦谷 明子, 堀田 喜裕, 佐藤 美保
    2006 年 35 巻 p. 93-97
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    複視に対するプリズム適応の検討
    目的〉処方されたプリズムに満足した症例としなかった症例を比較することによって、不満足であった原因を検討する。
    対象と方法〉平成15年1月~平成17年5月に複視を主訴に浜松医科大学眼科を受診した20歳以上の患者、総数144名のうち眼位の記載が不十分のもの、追跡ができなかったものを除く86名を対象とした。
    プリズム眼鏡を処方され満足した適応群と処方を受けなかったか、受けても不満足であった不適応群に分け性別、年齢、診断、視力、眼位、について検討した。
    結果〉86名のうち、自然治癒は12名、適応群は33名、不適応群はプリズム処方で不満足17名および手術24名をあわせた41名であった。水平、回旋斜視角で適応群、不適応群の二群間に有意差はなかったが、上下斜視角では有意差を認めた。また、上斜筋麻痺では、年齢および上下斜視角で有意差を認めたが、上斜筋麻痺以外で有意差は認められなかった。
    結論〉プリズムを勧めて満足できたものは対象者の半数以下であった。また、プリズムに適応できるかどうかは上下斜視角の程度に強く影響された。疾患別では、若年齢の上斜筋麻痺患者は斜視角が大きく、プリズムに満足しないことが多かったが、上斜筋麻痺以外では二群間に統計的に明らかな要因は認められず、症例ごとにトライアルをする必要があると思われた。
  • 清水 みはる, 中村 桂子, 奥村 智人, 澤 ふみ子, 濱村 美恵子, 稲泉 令巳子, 筒井 亜由美, 南 稔治, 江富 朋彦, 菅澤 淳
    2006 年 35 巻 p. 99-105
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    はじめに:近年、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)などの軽度発達障害児の問題は教育的な領域でクローズアップされてきている。大阪医科大学LDセンターで視知覚訓練などを行っている児童を対象に、眼疾患のための視知覚の発達の遅れが疑われる症例に関して、LDセンターと連携して眼疾患の検討を行う取り組みを始めているので報告する。
    対象・方法:対象は軽度発達障害児22名(男児16名、女児6名)で、小児科で知能検査WISC-IIIを行い、眼科にて精密検査を行い眼疾患を有する場合は治療を行った。
    結果:対象児のWISC-III知能検査の結果は言語性IQが88.7、動作性IQが78.4であった。視覚運動系の発達がやや悪い結果を示し、見る作業が苦手な傾向にあった。視知覚に影響するような眼疾患としては間歇性外斜視および外斜視が12名で、そのうち輻輳不全を伴うものが8名、内斜視2名、上斜筋麻痺1名、眼振2名、屈折異常があり眼鏡処方を行ったのは14名、そのうち弱視治療を行ったものは3名、斜視手術施行したのは3名であった。
    結論:軽度発達障害児は視知覚の遅れを伴うものが多いが、原因が眼疾患によるものか、発達の遅れによるものか鑑別は難しい。今回の結果より視知覚に問題を持つ軽度発達障害児には治療の必要な眼位異常や屈折異常が多く見られ、今後眼科と小児科や発達に関わる専門機関との連携が必要と思われた。
  • 兵藤 維, 臼井 千恵, 中川 真紀, 林 孝雄
    2006 年 35 巻 p. 107-112
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    症例は、10歳の男児。近医にて遠視性不同視弱視に対し長期間健眼遮閉を行っていたが、弱視眼の視力が向上せず、さらに健眼視力も低下してきたため当科受診となった。精査の結果、器質的疾患を認めず、らせん状視野を呈したことから心因性視覚障害と診断した。遮閉を中止したところ、健眼視力のみならず弱視眼視力も向上し、両眼とも矯正視力は1.2に改善した。弱視訓練の一つである健眼遮閉が、患児に精神的ストレスを与えることは周知のことであるが、心因性視覚障害を引き起こすと弱視眼に対する訓練効果の判断を見誤る可能性がある。弱視訓練による心因性視覚障害を予防するためには患児の精神面に対する管理を十分に行い、不必要に長期間の弱視訓練を行わないように注意する必要があると思われた。
  • 遠藤 寛子, 池田 福美, 中馬 秀樹, 直井 信久
    2006 年 35 巻 p. 113-117
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    小児の片頭痛による動眼神経麻痺を繰り返した症例を経験した。症例は10歳、男児(初診時3歳)。平成10年7月、保育園の帰りに母親が左の眼瞼下垂に気づき近医を受診。精査目的にて、同日当科を緊急受診した。初診時の視力は右0.8、左0.3。眼位は30Δ外斜視。眼球運動は内・上・下転制限があり、左の眼瞼下垂を呈していた。対光反射は右眼完全、左眼不完全で遅鈍。RAPD陰性。前眼部、中間透光体、眼底に異常なし。左の動眼神経麻痺と診断し、頭部CTを施行したが、異常はなかった。無治療にて外来で経過観察し、1ヵ月後に症状の完全改善をみた。平成17年2月、頭痛と複視、左眼瞼下垂が出現。近医よりFisher症候群を疑われ当院小児科入院となった。眼症状の評価のため当科を再診した。初診時と同様に、左の動眼神経麻痺を呈していた。3ヵ月後に症状の完全改善がみられた。本症例は、発熱を伴わない頭痛が先行し、その後動眼神経麻痺が発症した。同じ臨床経過を繰り返し、眼筋麻痺型片頭痛と診断した。興味深いことに頭部MRIにて動眼神経に増強効果がみられた。近年、同様な所見が複数報告されている。このことは、眼筋麻痺型片頭痛を炎症の関与する脱髄機序とする考えを支持するものであった。
  • 恒常法を用いて
    春石 和子, 前田 史篤, 米田 剛, 井川 美智子, 花田 有里子, 難波 哲子, 桐生 純一, 可児 一孝
    2006 年 35 巻 p. 119-125
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    目的:屈折異常の矯正に用いられる眼鏡、ハードコンタクトレンズ(以下HCL)、ソフトコンタクトレンズ(以下SCL)には、それぞれ異なる特性があり、見え方に差がある。今回、それら3種類の屈折矯正手段における視力の差や安定性について、恒常法を用いて検討した。
    方法:対象は健常成人3名6眼。視力の評価は、精密に閾値を定量することが可能な恒常法を用いた。視力は、5段階の視標を各20回呈示して得られた知覚確率曲線から求めた。屈折矯正は、眼鏡、HCL、SCLの3種類で行い、それぞれ各10回の視力の結果を分析した。視標呈示時間は0.5秒と3.0秒で行った。
    結果:視標呈示時間0.5秒でのHCL矯正視力は、他者と比べて、不安定であった。視標呈示時間を3.0秒にすると、HCL矯正視力は向上し、分散も減少した。SCL矯正視力は、視標呈示時間3.0秒で分散が増加する傾向にあった。強度近視眼における眼鏡矯正視力は、他者と比較して不良であった。
    結論:HCLは、瞬目に伴うレンズの動きが大きいため、視標の呈示が短時間では視力が安定しなかった。SCLでは、長時間になると涙液の乾燥が影響して、視力が分散しやすい傾向であった。眼鏡は、短時間でも安定した視力が得られたが、強度近視眼では網膜像の縮小効果により、視力が低値となることが恒常法でも確認できた。
  • 村上 みや, 矢野 隆, 四之宮 佑馬, 新井田 孝裕
    2006 年 35 巻 p. 127-131
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    目的:調節に伴う角膜屈折力の変化を調節力が強い若年者を用いて検討した。
    対象及び方法:対象は屈折異常以外の眼科的疾患を認めない39名39眼。年齢は20.85±1.25歳、等価球面での屈折値-4.67±2.93Dである。他覚的屈折値測定には、両眼開放下オートレフラクトメータWR-5100K™(グランド精工社製)を用いて、調節に伴う平均角膜屈折力、弱主経線、強主経線に分けた屈折力の変化量、また屈折の程度で比較検討した。
    結果:調節に伴う平均角膜屈折力の変化に有意な正の相関が認められた(Spearmanの順位相関:r=0.193,p=0.016)。調節に伴う弱主経線(r=0.137,p=0.088)の変化に相関が認められなかったが、強主経線(r=0.182,p=0.023)の変化には有意な正の相関が認められた。また、強度近視群において調節に伴う平均角膜屈折力の変化に有意な正の相関が示された(r=0.292,p=0.036)。
    結論:調節に伴う平均角膜屈折力のSteep化が認められ、また強度近視群においても調節に伴い角膜屈折力のSteep化が認められた。
  • 大川 純奈, 酒井 幸弘, 宇陀 恵子, 内藤 尚久, 市川 一夫, 前田 征宏, 中村 英樹, 玉置 明野
    2006 年 35 巻 p. 133-139
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    【目的】新しい前眼部測定装置AC Master (Carl Zeiss)における角膜厚の測定精度を検討した。
    【対象と方法】正常眼10例20眼(30.2±3.5歳)。AC Master、スペキュラマイクロスコープSP-2000P(Topcon)、Orbscan II z (Bausch & Lomb)、Pentacam(Oculus)、超音波AL-2000(Tomey)の5種類の異なる測定原理の機器を用いて角膜厚を測定した。
    2検者にて各眼をそれぞれの機器で10回ずつ測定し、角膜厚について検者間の差およびAC Masterと他の機器との比較をした。
    【結果】各機器の平均値及び標準偏差は検者Aでは、AC Master521.6±2.4μm、SP-2000P 532.4±4.4μm、Pentacam 542.7±4.5μm、AL-2000 548.5±6.1μm、Orbscan II z 554.8±5.0μm、であった。検者Bでは、ACMaster521.9±2.3μm、SP-2000P 533.4±4.2μm、Pentacam 539.5±4.7μm、AL-2000 542.4±4.9μm、Orbscan II z 554.0±4.4μm、であった。
    検者間測定値の差の平均は、AC Masterは1.9±1.9μm、SP-2000Pは3.2±2.9μm、Pentacamは6.4±3.2μm、AL-2000は9.4±7.0μm、Orbscan H zは3.7±3.1μm、であり、AL-2000が最も検者間の差が大きく、有意差を認めた。(t検定:P<0.01)
    標準偏差からみた測定値のばらつきは両検者ともAC Masterが最も低い値であった。AC Masterと各機器の角膜厚の値はいずれも高い相関を示した。
    【結論】今回の結果では角膜厚は光干渉によるAC Masterでの測定値が最も薄く、スリットスキャン式のOrbscan II zが最も厚かった。再現性はAC Masterが最も高く、超音波式が最も低かった。AC Masterによる角膜厚測定は、高い再現性を示す事が証明され新しい方法として有用である。
  • 春日井 めぐみ, 浅野 典子, 堀 普美子, 櫻井 寛子, 川瀬 芳克
    2006 年 35 巻 p. 141-146
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    目的:Vistech社製Teller Acuity Cards™(以下TAC)とStereo Optical社製Teller Acuity Cards II™(以下TAC II)の縞模様のコントラストの違いに着目し、両者間の測定結果に差がないか検討した。
    対象:平成17年5月から2ヶ月間に当センターを受診した小児のうち、器質的疾患・顕性斜視・発達遅滞がなく、屈折異常がS±3.0D、C±20D以内で、円滑に検査ができた80名である。年齢は生後4ヶ月から36ヶ月、平均19ヶ月であった。
    方法:検査距離は、生後6ヶ月以下は38cm、7ヶ月以上は55cmとし、両眼視力を測定した。測定結果を底が2の対数に換算し、ウィルコクソンの符号付順位検定法にてTACとTAC IIを比較検討した。コントラストについては輝度計を用いて測定した。
    結果:輝度計の測定結果は全体にTACの方がコントラストが高く、特に6.5cy/cm以降両者の差は顕著であった。TACの視力測定結果は全体80名で0.33オクターの有意差を認め、TACの方が良い結果であった(p<0.001)。TAC IIの視力が0.32cy/cmから4.8cy/cmまでの結果では0.25オクターブの差であったのに対し、6.5cy/cm以降の差は0.41オクターブで、コントラストの測定結果と同様の傾向を示した。
    結論:TACとTAC IIでは有意差を認めるも、0.5オクターブ未満の小さいものであった。測定結果は6.5cy/cm以降で差が大きくなる傾向があり、それはコントラストの測定結果と一致した。
  • 石井 雅子, 張替 涼子, 阿部 春樹
    2006 年 35 巻 p. 147-154
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    正常な小児の読みの傾向を知る目的で、読書視力評価チャートであるMNREAD-JKを用いて調査した。対象は、低学年群:小学1~3年生の36名、高学年群:4~6年生の36名、および20歳群:20歳の学生16名である。MNREAD-JKの黒文字/白背景チャートと白文字/黒背景チャートの2つのチャートでの読書速度を測定し、最大読書速度、臨界文字サイズ、読書視力の3つのパラメータと誤読について検討した。最大読書速度は低学年群で最も遅く、年齢群が上がるに従って有意に向上した。臨界文字サイズ、読書視力は年齢群による差はみられなかった。白文字/黒背景チャートは、正常視覚の小児、成人においても読書速度を向上させ、誤読を低下させる傾向があった。低年齢群ほど、自覚的に読みやすいチャートと実際に速く読めたチャートの不一致が多くみられた。チャートの読み材料の中に小児が誤読しやすい単語がみられた。読書速度は視覚発達以外の因子、例えば、知的発達、学習経験などが関与し、さらに、MNREADにおいては音読により評価を行うことから構語能力の影響も受けると推測される。MNREADにおける読書速度検査は被検者の意志に左右されにくい比較的客観的なデータを得ることができ、小児の視機能評価に適すると考える。
  • 池田 福美, 遠藤 寛子, 中馬 秀樹, 直井 信久
    2006 年 35 巻 p. 155-158
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    器質弱視と近医にて診断された症例に対し、遮閉療法が有効であった2症例を経験したので報告する。症例1は、9歳の女児(初診時4歳)。3歳児健診で視力不良を指摘され近医を受診した。両眼の視神経炎と診断され、ステロイド加療をされたが視力改善せず、当科を受診した。初診時矯正視力は、右眼(0.08)、左眼(0.7)。両眼底に乳頭腫脹を認めるも、偽性うっ血乳頭と考えた。調節麻痺下の屈折検査にて、右眼+7.0D、左眼+3.0Dの遠視を認めた。完全矯正と健眼遮閉を開始した結果、矯正視力は、右眼(1.0)、左眼(1.0)と改善した。症例2は、6歳の女児(初診時4歳)。吐気や嘔吐が頻回にあり、脳神経外科にてMRIを施行し、左眼窩部腫瘍を指摘された。視覚の精査目的にて当科を受診した。初診時視力は、右眼1.2(n.c.)、左眼0.4(n.c.)で、RAPD陰性であった。調節麻痺下の屈折検査で、左眼に+1.5Dの遠視を認めたため、完全矯正と健眼遮閉を開始したところ、右眼1.5(n.c.)、左眼(1.5)と改善した。偽性うっ血乳頭は視力予後が良好であることや、眼窩腫瘍にも関わらずRAPDが陰性であったことから、視力不良の原因は屈折異常にあると考え、弱視治療を行い、視力が向上した。このように、器質的疾患による、機能的弱視かを判断するにあたり、神経眼科的知識が有用で、積極的な弱視治療を行うことは重要であると考えられた。
  • 高橋 弥生, 筒井 健太, 藤山 由紀子, 清水 公也
    2006 年 35 巻 p. 159-163
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    非屈折性調節性内斜視の二重焦点眼鏡による治療はエグゼクティブ型眼鏡が一般的と言われる。我々は、二重焦点眼鏡のアイデアル型レンズを処方し、経過良好な1例を経験したので報告する。症例は現在6歳女児。初診時年齢3歳10か月。高AC/A比を認めたため、4歳8か月時に二重焦点眼鏡のエグゼクティブ型レンズを処方した。処方後、眼位の安定は得られたが、レンズが重いこともあり、下方にずれやすく眼鏡近用部を使いこなせなかった。そこで近用部をより使い易くする目的で、小玉径35mmのアイデアル型レンズを用い眼鏡を処方した。その後の眼鏡の装用状態は良好で視機能の改善がみられた。二重焦点眼鏡のアイデアル型レンズの使用は、非屈折性調節性内斜視の治療の1つになり得ると考えられた。
  • 牧野 恵奈, 牧野 弘之, 名和 良晃
    2006 年 35 巻 p. 165-170
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    遠近両用コンタクトレンズにおける視覚への影響を知るために、立体視機能の測定、更に患者満足度アンケート調査を行い分析した。対象は、2004年5月以降に当院を受診し、遠近両用コンタクトレンズを処方された22名。方法は、22名に対し屈折値、視力、HCL装用年数、立体視機能をTitmus Stereo Testにて測定した。その後、遠近両用コンタクトレンズを処方した患者に対し、了解を得てCSQ(Client Satisfaction Questionnaire)-8を使用し、患者満足度の調査を行った。結果は、マルチビューEX(L)装用における視力の平均値については、遠見は(1.2)、近見は(0.9)となった。
    検眼レンズ又は近用眼鏡におけるTST・立体視機能が良好であれば遠近両用コンタクトレンズを装用しても良好な満足度を維持することが出来た。立体視機能の平均値は、検眼レンズに於いては51.8sec、マルチビューEX(L)64.5secであった。
    また、調査8項目の合計スコアの平均は、23.7であり、ほぼ満足が得られている。また、スコアのピークは21であった。
    視力だけではなく立体視機能TST50~60sec以上であれば、より満足度の得られる処方が可能となるのではないかと考えられる。以上の結果より、CSQ-8Jは十分な内的一貫性と一定の基準関連妥当性を示し、更に、これを使用して学術的に信頼できる患者満足度測定が出来ていると考えられた。
  • 小林 隆宣, 湯泉 真規子, 柿崎 裕彦
    2006 年 35 巻 p. 171-174
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    輻湊近点の測定は、通常、調節視標を使う場合が多い。しかし、red filter & light(以下、RF & L)で測定することにより、調節視標に比べて、輻湊近点の延長を早期に発見することが出来る。症例は初診時5歳4か月の女児で屈折性弱視を主訴に受診した。初診3か月後、矯正で視力は改善した。その時の輻湊近点は、調節視標では正常範囲内であったが、RF & Lでは延長が見られた。そこで家庭での輻湊訓練を指示したが施行されず、輻湊近点は調節視標で延長し、さらに近見、遠見は間歇性外斜視へ移行した。その後、輻湊訓練を行った結果、輻湊近点の延長はなくなり、近見、遠見とも外斜位に改善した。輻湊近点の延長を早期に発見し、早期に治療を開始するためには、RF & Lによる測定は有用である。
  • 林 弘美, 小寺 久子, 三輪 まり枝, 中西 勉, 石田 みさ子, 簗島 謙次
    2006 年 35 巻 p. 175-179
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    目的:網膜色素変性症患者の日常生活における両眼視の限界点について検討した。
    方法:国立身体障害者リハビリテーションセンターを平成14年から平成16年までに受診し網膜色素変性症患者23名に対し、近方での両眼視機能検査としてベレンス、 Titmus Stereo Test,遠方での眼位検査として大型弱視鏡検査をおこなった。
    結果:網膜色素変性症で、視力LogMAR値0.1未満(小数視力0.8以上)の患者の両眼視機能は良好であった。LogMAR値が0.3以上(小数視力0.6未満)の場合、近方視検査(ベレンス、T. S. T検査)で単眼視となっており、大型弱視鏡で精査すると半数以上の患者が上下斜視を有している事がわかった。
    結論:網膜色素変性症患者の両眼視は、視力、視野の低下に伴って融像維持が難しくなり単眼視や複視となる事が多い。しかし、周辺視野が残っている場合、大型弱視鏡検査で上下斜視は検出されなかった。
  • 山崎 幸加, 田口 亜希子, 福永 紗弥香, 石井 祐子, 南雲 幹, 若倉 雅登, 井上 治郎
    2006 年 35 巻 p. 181-187
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    視能訓練士が、眼科外来で経験したヒヤリハット事例について、内容・経験年数・発生日時および発生時の業務の多忙度について調査し、発生原因に関する検討を行った。
    点眼と検査に関する報告が多数あった。報告の中に重大事故は無かったが、「点眼時の薬剤間違い」「患者の間違い」など、重大事故につながる可能性のあるインシデントが多かった。「点眼ミス」「診察室を間違えて案内する」等、確認不足が原因となるヒヤリハット報告は経験年数の短い者から多数あり、経験年数が長くなるにつれその割合が減少した。しかし、経験年数の長い者からも「眼鏡処方検査でのカルテ記載ミス」の報告があり、経験年数だけでなく、従事する業務内容によっても報告の内容が変化していると考えられた。ヒヤリハット報告数は、多忙時に多くなっている傾向があったが、報告時の自覚的多忙度では「多忙」よりも「普通」と答えた者が多く、報告者自身が「多忙」と感じていない、もしくは個人的な「多忙」の状態をミスの原因にしたくないという意識が働いていた可能性があり、指示系統の適切性や確認の手順など、システムエラーに関する検討が重要と考えられた。よって、ヒヤリハット事例は、「確認不足」「経験年数による業務内容の変化」「多忙」等の因子が複雑に絡み合って発生していると考えられた。
  • 宇部 雅子, 渋谷 政子, 工藤 利子, 森 敏郎
    2006 年 35 巻 p. 189-194
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    3歳児健診を受診したにもかかわらず視力異常を指摘されず、後に弱視治療が必要とされた症例につき、3歳児健診をすり抜けてしまった原因を検討した。
    対象は平成12年1月~平成15年5月までに、岩手県立一戸病院、同中央病院を受診し、弱視治療を必要とした15例24眼で、年齢分布は4~11歳であった。これらの症例の、初診時年齢、弱視の種類、眼科受診の動機、初診時視力、調節麻痺下屈折度、視力予後につき調査した。その結果、弱視の種類は、屈折異常弱視が9例18眼、不同視弱視が6例6眼であった。学校健診と就学時健診で視力不良を指摘され受診したものが15名中10名であった。初診時裸眼視力は、0.5未満が24眼中17眼(70.8%)で、調節麻痺下の屈折度は中等度から高度の遠視性乱視が最も多く、次に混合乱視が多かった。裸眼視力0.5以上は7眼(29.2%)で、中等度以下の遠視性乱視あるいは混合乱視であった。乱視の種類は、直乱視が24眼中22眼で、乱視度数が-2D以上を有しているものが多かった。視力予後は、15例中13例で矯正1.0以上が得られた。3歳児健診で視力異常を指摘されなかった原因は、屈折異常や弱視の種類より、システム自体の問題と考えられた。他覚的屈折検査の導入や視力検査方法の検討で、3歳児健診を更に有意義なものにする必要があると思われた。
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