労働安全衛生研究
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原著論文
政令指定都市の救急搬送データを用いた仕事場を中心とした熱中症の発生場所別分析
上野 哲 早野 大輔野口 英一有賀 徹
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2021 年 14 巻 2 号 p. 119-128

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抄録

仕事場での熱中症の発生件数は気象条件の影響を大きく受ける.近年増加している高年齢労働者の割合も仕事場での熱中症の発生件数に影響を及ぼす可能性がある.仕事場を中心とした熱中症発生状況を詳しく把握するため,軽症まで含む熱中症救急搬送データを分析した.発生場所別男女別に熱中症救急搬送者数を年齢,発生季節(旬),発生時刻,重症度,覚知時WBGTの観点から比較した.全熱中症救急搬送者数の中で仕事場の割合は20~59歳男性で32.3%, 女性で10.8%だった.旬別では,男女とも8月上旬が最も多く次は7月下旬であった.発生時刻別では,男性では12時と15時に2つのピークがあり,昼休みの時間で熱中症救急搬送者が減っていた.曜日別では,男性で平日に仕事場での熱中症が多く,女性では月曜日のみ多かった.土曜日は男性で平日平均の74.1%, 女性で84.2%であった.男女とも仕事場での熱中症は軽症が有意に多かった.覚知時WBGTが高くなると仕事場での熱中症救急搬送者数は指数関数的に増加し,WBGT1℃の上昇につき約1.6倍増加した.暑熱気象条件下では,仕事場での熱中症救急搬送者数は住宅より有意に増加率が高かった.年代別では,20歳代から50歳代まではほとんど変わらなかったが,60歳代からやや増加傾向にあり70歳代以上では急増した.暑熱環境下及び高年齢労働者に対する熱中症対策の重要性が示唆された.

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© 2021 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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