労働安全衛生研究
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調査報告
事業所のエアロゾル感染予防に向けた調査手法の提案と実証
-医療・高齢者施設における事例分析-
石垣 陽 加藤 辰夫
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2023 年 16 巻 2 号 p. 173-180

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抄録

エアロゾル感染は同時期に多人数の感染を起こすため,特にリスクの高い医療機関・高齢者施設では予防が重要だが,これらの事業所で感染対策上の問題を発見し改善するためのチェック方法は確立されていない.そこで本研究では,エアロゾル感染の3つの防護策(換気・空気清浄・気流制御)ごとに8つの管理項目を設定し,具体的な管理目標を定めたチェックリストを作成した.その上で,このチェックリストに基づいて18か所の医療・高齢者施設に立ち入り,合計263ヶ所の居室を調査した.調査の結果,問題が発見された居室の72%において機械換気量が不足し,そのうち48%は掃除不足が原因であった.この背景要因として,特に屋外のガラリは点検・清掃を想定した設計になっておらず,長年の綿埃が蓄積し閉塞に至っていたことがわかった.また機械換気量不足の原因の21%はスイッチの入れ忘れであり,この背景要因としてスイッチの運用徹底の不備,操作パネルのユーザインタフェースの問題,集中制御の引き継ぎミスなどが挙げられ,よりヒューマンファクターに配慮した対策が求められる.この他にも,問題が発見された居室の18%において気流制御における漏洩の問題があり, 5%以下ではあるものの送風機の設置方法,自然換気の阻害及びCO2 濃度が1000ppmを超える等の問題も散見された.以上より,本研究で提案したチェックシートが問題発見に有効であることが確認できた.

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© 2023 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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