2024 年 17 巻 1 号 p. 63-69
玉掛け用ワイヤロープは,荷の移動を目的に製造業や建設業で広く利用されている一方で,鉄鋼製のため重量があることから,引き摺られて移動されるなど,損傷を受けやすい環境にある.そのため,玉掛け用ワイヤロープは損傷の程度に応じて廃棄,交換する必要がある.ワイヤロープの廃棄基準はJIS B 8836に規定されており,素線断線,キンク,うねり,つぶれ等の各損傷項目において廃棄の要否が判定できるようになっている.本稿では,製造業で長期間使用された玉掛け用ワイヤロープの損傷状態を調査し,確認された損傷に対してJIS B 8836の廃棄基準から,廃棄の要否を判定している.また,損傷を有するワイヤロープの残存強度として,破断力(または,引張強さ)を実験的に得て,新品ロープの破断力と比較している.得られた結果から,玉掛け用ワイヤロープの破断力の低下に最も寄与する損傷を推定するとともに,損傷を有する玉掛け用ワイヤロープの早期交換の必要性を紹介する.