労働安全衛生研究
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調査報告
働く障害者の安全衛生向上のための職場改善に向けて
-多職種連携による調査から-
辻󠄀村 裕次 北原 照代嶋川 昌典白星 伸一鈴木 ひとみ垰田 和史
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2024 年 17 巻 2 号 p. 143-152

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抄録

就労障害者には個々の障害に応じた安全衛生が求められる.そこで,災害事故の実態把握および障害者特性と作業方法・環境の評価を目的に,障害者が就労する6民間事業所と就労系福祉サービスを行う4作業所を訪問調査した.災害事故例,障害者への配慮を含む安全衛生管理,障害者の就労と退職の状況を聴取し,作業方法・環境を観察した.

事業者の従業員特性に対する高い理解と就労障害者の作業能力から障害を理由とした作業起因事故はなかった.知的・発達・精神障害者の安寧確保のために静かな環境創出等の配慮が行われていた.発達・精神障害者の医学的特性や,てんかん・精神疾患のある従業員の服薬管理と発作時の対応が事業者には理解されにくかった.肢体障害者には,その身体機能に応じた物理的環境が整備されていた.進行性疾患や加齢による身体機能低下が懸念される障害者には,定期的な身体機能評価により作業環境等を調整する必要のあることが把握できた.福祉的就労では,座位で単調繰り返し作業が多く行われ,利用者が集まる密度を低くする工夫は見られたものの,転倒衝突の事故が多く,一般企業で通常行われている作業負担軽減策が不十分であった.就労障害者の安全衛生には,医療や労働衛生,就労系障害者福祉,中小規模事業所経営の総合的観点から就労障害者の生活面を含めて相談・指導できる専門家や介入の仕組みが必要と考えられた.

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© 2024 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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