労働安全衛生研究
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原著論文
グレーバ炉を用いた自己発熱性試験による空気流動が活性炭の自然発火温度へ与える影響の調査
西脇 洋佑
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2025 年 18 巻 1 号 p. 15-21

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抄録

空気との反応による化学物質の蓄熱(自己発熱)の危険性について,一般には自然対流や一定の流速での条件で測定されるものの,実際の化学物質の貯蔵・利用環境では気象や空調,乾燥塔の設定などの影響を受け,幅広い空気の流動条件が考えられる.化学物質周辺の空気の流れる速度(流速)の上昇は酸素ガス等の反応物の供給量の増大を意味し,発火の危険性を増大させる一方,過度の空気の供給は冷却効果をもたらし,発火の危険性を低減することが考えられ,これらの影響を十分に考慮せずに蓄熱による発火の危険性評価を実施した場合,危険性を過小・過大評価する恐れがある.本研究では活性炭をモデル物質として,流速の制御が可能な小型のワイヤーバスケット試験装置としてグレーバ炉を利用することで空気流動の影響の評価が可能な等温条件での自己発熱性試験を実施可能であるか検討し,また活性炭の蓄熱発火危険性における流速の影響の調査を行った.調査の結果,グレーバ炉の通常の測定法である昇温条件での試験においても流速変更に伴う発火温度の変化が見られ,さらに,昇温条件での結果を基に設定した等温条件でのグレーバ炉を用いた試験結果より,流速の上昇に伴う酸素供給量の増大による自然発火温度低下と,過度の流速の上昇がもたらす冷却効果による自然発火温度上昇をそれぞれ確認することができた.

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