労働安全衛生研究
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原著論文
簡易的な噴出帯電の危険性評価方法における湿度の影響
遠藤 雄大
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2025 年 18 巻 2 号 p. 65-71

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抄録

液体がノズル等から噴出する際に生じる静電気帯電(噴出帯電)について,これまでの研究から,その潜在的な危険性は液体の種類やノズル材料に強く依存すると推測される.筆者はこれまでに,任意の液体と材料の組み合わせについて噴出帯電の危険性を簡便に評価する方法を提案し,これによりノズル使用時の噴出帯電現象を概ね再現でき,危険性評価にも有用であることを確認した.一方で,上記研究における各種実験条件は暫定的なものであり現時点では最適とはいえない.とりわけ,測定時の湿度環境は,帯電量を大きく左右する可能性があり,場合によっては噴出帯電の危険性を誤評価する要因となり得ることから,その関係について優先して調査する必要がある.そこで本研究では,2通りの相対湿度(40%RH,60%RH)のもとで,8種類の液体(ケロシン,ミネラルスピリット,酢酸ブチル,酢酸エチル,酢酸メチル,アセトン,エタノール,水道水)と4種類の材料(SUS304,PTFE,MCナイロン,アルミナ)との各組み合わせについて,帯電量測定を行い,測定結果に対する湿度の影響を調査した.その結果,ほとんどの組み合わせでは,高湿化により帯電量が顕著に小さくなる傾向が見られた.ただし一部の組み合わせにおいては,反対に高湿度の場合に帯電量がより大きくなった.いずれにしても,測定結果が湿度環境に強く依存するため,提案方法による危険性評価時には湿度の取り扱いに十分注意する必要がある.

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