労働安全衛生研究
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特集総説
企業会計と労働者の健康について
—労働安全衛生に係る企業情報の開示状況—
永井 道人
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2014 年 7 巻 1 号 p. 3-12

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抄録

我が国では,金融商品取引法の法定開示制度のもと,上場公開企業は毎期決算日後3か月以内に投資家の投資判断材料に資する有価証券報告書を作成し開示する.有価証券報告書上絶対的記載事項の対象でない「労働安全衛生」に言及している日本の企業・事業者数は,上場公開企業3,000社超のうち100社超程度で,その割合は約3%に過ぎない.その開示内容を見ると,非財務情報とはいえ企業間比較に資する情報を極力開示したくない理由もあり,労働安全衛生分野の内容は乏しく,開示姿勢も消極的である.一方,労働分野における企業の社会的責任(CSR)の風土・文化・価値観が既に醸成されている米国及び欧州では,それを配慮する機関投資家の存在もあり,事情は一変する.日本企業の労働安全衛生に係る情報開示は,過去の雇用形態及び労働慣習に従い,また労働分野でのCSRの議論も起こることなく,これまで我が国にてクローズアップされて来なかった.今後金融資本市場の国際化と会計基準の国際的な収斂(企業の国際会計基準の導入)に伴い,労働安全衛生に関する事業者の取組みは,財務情報もしくは非財務情報の形で否応なく実態に応じた適切な開示が求められ,企業・事業者の「より労働者保護」の記述観が必要となる.本論文では,日本企業の意外な盲点であり,看過されてきた労働安全衛生分野の開示状況を,欧州企業と比較しながら現状とその背景に触れ,関連する諸課題の紐を解きながら,最後に将来に向け考え得る方策を論じる.

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© 2014 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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