抄録
衣服を構成する生地の物理的性質だけでは,着衣の温熱特性を予測することは不可能であるため,温熱特性の計測には人と同じ形状をしたサーマルマネキンが使われる.現在,環境評価やモデル計算との関連等の広い分野でサーマルマネキンは応用されている.本研究紹介では,労働安全衛生総合研究所の清瀬地区にあるサーマルマネキンを使った2つの研究成果を紹介する.一つは,防火服の暑熱ストレス評価のためにサーマルマネキンを使って行った顕熱抵抗測定した研究である.歩行により顕熱抵抗は減少し,サイズ・材質によって減少の割合は異なった.次は,同サーマルマネキンを使って,スウェットスーツ上の水分蒸発部分における表面温度を正確に測定することで潜熱抵抗測定の高精度化を行い,測定技術を向上させた研究である.マネキンの埋め込み温度センサーで測定した表面温度を使用すると潜熱抵抗が過大評価されることがわかった.