労働安全衛生研究
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技術解説
労働安全衛生分野における精子分析法の活用
大谷 勝己 三浦 伸彦
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2016 年 9 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

重金属による生殖障害事例はローマ帝国の時代から知られたことであった.近年では,1960–70年代にイスラエルや米国で発生した薫蒸剤のジブロモクロロプロパンによる生殖障害事例の集団発生は,当時の労働安全衛生分野における生殖毒性試験の重要性を喚起した.さらに,1995年に,主に半導体の洗浄剤として用いられていた2-ブロモプロパンの職業的ばく露による極東アジアで起きた生殖障害事例は,当時発生した内分泌撹乱化学物質の問題と相まって,労働安全衛生分野のみならず,毒性学的にも雌性ばかりではなく雄性生殖毒性試験の重要性を再認識させた.筆頭者は,科学技術庁(現文部科学省)振興調整費(H10–12年度),生活・社会基盤研究のうちの生活者ニーズ対応研究『内分泌攪乱物質による生殖への影響とその作用機構に関する研究』の一環として「雄性生殖毒性評価のための効率的な精子毒性試験の開発」を担当したことがきっかけとなって,労働安全衛生分野における精子の分析法の活用に取り組むことになった.そして,従来型の精子分析法(精子数,精子運動能,頭部を中心とした精子形態解析)は機械が高額であったり簡便でなかったりする点で普及性の乏しい面があったり,化学物質の特性に応じた分析法には必ずしもなっていなかったことがわかった.そこで,新しい手法・簡便法の開発や,新しい指標の導入開発,変法的用法などを駆使して解析することになった.その過程を技術面から時代をおって解説する.

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© 2016 独立行政法人労働安全衛生総合研究所
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