抄録
本研究の目的は,大阪府下の精神科専門医療機関における職場のメンタルヘルスに関する相談や職場復帰支援のサービス提供についての実態を調査し,産業医資格の有無や心理の専門家の存在の有無との関連性について検証する.2013年に大阪府下の医療機関470件を対象に調査票を郵送し,調査協力に同意の得られた215件から記入済み調査票を回収した(回収率45.7%).看護師(63.7%)に次いで,心理の専門家として臨床心理士(46.5%)と精神保健福祉士(34.0%)が存在する医療機関が多いことが示された.産業医資格を有する医師が在籍している医療機関も48.4%存在していることがわかった.職場復帰支援(リワーク支援)に取り組んでいる医療機関は19.5%存在し,現在サービス提供はしていないが将来的に取り組もうと考えている医療機関も17.7%存在していることがわかった.産業医資格を有する医師の在籍により,本人の同意があれば事業場の者との面談や,情報提供依頼への対応が可能,リワーク支援サービス提供の実施率が高くなっていることが示された.心理の専門家の在籍により,カウンセリングや女性のメンタルヘルス相談,リワーク支援サービス提供及び将来的なサービス提供の割合が高くなることが示された.専門医療機関が職場のメンタルヘルスに関するサービスを提供するためには,産業医資格を有する医師の在籍と,心理の専門家の在籍が関連していることが示された.